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□18歳の夏休み(南)
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蝉のけたたましいほどの音とガンガン照り付ける太陽、夏休み。

「南くんーお菓子食いたい」
「南、代入ってどうやるんやったっけ」

前髪をゴムでとめて眼鏡をした土屋と長暑苦しいもじゃもじゃの髪をかきむしる岸本…見るだけでむさい。学生の本分は学習なわけで、夏休みの課題がわんさかでとるわけで。

「そこに菓子あるやろ」
「僕辛いミンティア食べれんー」
「岸本は教科書見ろ」
「こんなん習っとらん」
「お菓子ー」
「あ、土屋がファンタ零した!」
「南くんティッシュ!!ティッシュどこや!!」

俺らは受験生なわけで。今日は夏休み最終日なわけで。俺は忙しいわけで。

俺の中で何かがキレる音がした。


「じゃあかーしいんじゃボケ!!お前ら今すぐ出てけ!!」




奴らを追い出したった。人口密度が減った涼しい部屋で俺はベッドに転がった。俺は何をしとるんやろか。俺は勉強せなあかんのや。俺は仮にも受験生なわけで。最後の夏休みで。ガラの悪い豊玉は推薦が通りにくいわけで。ましてや俺が目指すのは薬学部なわけで。だからテストが大事なわけで。

でもまあ、この夏が終わり秋が色付いて、冬が過ぎて春が来ると、岸本がテスト前に泣きついてくることもなければ、土屋にばったり駅で絡まれることもない。

それはとても爽やか清々する生活だろう。けれどなんだか想像つかなかった。

土屋が零したファンタが缶からポタリポタリと垂れてカーペットに染みができた。あかん。おかんに殺される。

ティッシュを何枚か抜いて急いで拭くと、じんわり身体に悪そうな紫色が滲んで思わずため息が零れた。何しとるんや俺。

甘ったるい匂いが嫌で窓を開けた。頬に触る空気が蒸し暑くて、空には入道雲が無駄に存在感を主張していて、なんだか苛立った。




「あ、南くーん」

下から気が抜けた声が聞こえた。気のせいやろか。


「みなみー俺を見捨てんといてー!」
「アイス買ってきたでー」

土屋がコンビニ袋を掲げている。ああ、こいつらは。

「ガリガリ君梨味買ったやろなー」
「当たり前やん」
「まあ俺らはダッツやけどな!」
「帰れ」



階段を上ってくる二つの乱暴な足音を聞いて、なぜか頬が緩んだ俺も大概アホやと思う。

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