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□帝王の秘密(彦一)
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もーほんま堪忍!

わいは今海沿いの歩道を走っている。冬の海風は冷たい。理由は次期キャプテンの失踪事件。あの人のことだからたぶん海付近で釣りをしてるんじゃないかと踏んだのだけど見当たらん。どこにおるんや仙道さん!

すると海岸に佇んでいる大きな人影を発見した。仙道さんではなさそうや。あれは―――我等が陵南のライバル海南大附属の牧さん!制服姿にマフラーを巻き、鞄を脇に抱える姿はどう見てもサラリーマン。あの貫禄は17歳のものちゃうわ。

いかんいかん。こんなビックなチャンスあらへん、データ収集や。
「こ、こんにちは!」
「こんにちは……あ、君は陵南の」
「相田彦一です!一年です!」
「おお、ヒコイチくん…一年か。清田と同級生だな。陵南は…三年の魚住が抜けて二年に仙道もいるな。」
感動や…。帝王がわいの名前を呼んどる。
「はい!そのエースが逃走中なんですけど。…牧さんは海が好きなんですか?」
「ああ、」
「仙道さんと同じですね。仙道さんは釣りなんですけど!」
「ほう、…俺は波に乗るほうだがな」

えーーー牧さんサーファーなんやーー!!地黒やないんやーー!!

「牧さんサーフィンやられるんですか!?」
牧さんは海のほうを見て「ああ、」とだけ言って照れ臭そうに笑った。帝王もこんな笑い方をするのか。常勝を掲げた王者海南の帝王が少し、ただの17歳に見えた。少しだけ。

「お、そろそろ行かなくてはならん。じゃあヒコイチくんまたな」
「あ――牧さん最後に!」
「お」
「そのマフラー、」

牧さんは一瞬驚いた顔をして、赤いマフラーに手をやった。すこしほつれめがあって、お世辞にも帝王には似合うとは言えないものだった。わいの推理が正しいなら牧さんのカノjy「おお、手編みだ。母親の趣味でな」
「え」
「あれ、彦一?…と牧さんじゃないですか」
「…はっ!仙道さんどこ行ってたんですか〜探したんですよ!」
「おお、仙道。釣れたか?」
「いや、今日はサッパリ」
仙道さんは外国人のように肩をすくめた。どうやらこの二人は思いのほか親しい仲だったようだ。

「ほら、仙道さん行きますよ!わいまで越野さんに怒られちゃうじゃないですか」
「ハイハイ、じゃあ牧さんまた」
「おう」

牧さんの後ろ姿を見送った。
神奈川の帝王の正体は、親孝行なちょっぴり老け顔の17歳だった。

……けど、

牧紳一……さん。
わいの想像を絶するツワモノやった。
今後も要チェックや!

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