text

□旅行ゲーム(清田)
1ページ/1ページ

 


ほとんどの部活は夏休み中に合宿をする。我が海南バスケ部もその中のひとつだ。

「なんか修学旅行みたいで楽しいっすね!」

初めての合宿に俺は気持ちが高まっていた。俺達が合宿で泊まるのは監督の知り合いの人が経営するこのおんぼろ旅館だったけど、みんなで布団を敷いて広間で寝るなんて嫌でもテンション上がる。風呂に入って部屋に戻るとすぐに「消灯ー」と監督の声がかかって電気が消される。おおこれだよコレ!武藤さんと「女は脚か胸か」の討論しているとずっと目を閉じていた神さんが、ぱっちりした目でこっちを見て言った。

「ねぇ信長、旅行ゲームって知ってる?」

「なんすか旅行ゲームって」
「聞いたことねえな」

「ルールは簡単、」

神さんが言うにはこうだ。

・まず全員が輪になって手を握る
・部室から体育館に行く自分を目をつむって想像する
・旅行ゲームをやってる間には一言もしゃべってはいけない。手も離してはいけない。
・ホストが手をパン、と叩くまで続ける。
・言い付けを守らないと戻って来れなくなる

え、おい、待て待て。

「……戻ってこれなくなる…?」


「いいじゃん楽しそうだしやろうぜ」

武藤さんはノリノリだった。

「牧もやるだろ?」
「まあ、おもしろそうだな」

いつもこんな誘いには乗らない牧さんもやる気だ。旅行マジックか?テンション上がっちゃったんすか?

「じゃあやろうか」


そうして旅行ゲームが始まった。あとからこの神さんの提案がとんでもない悲劇を招くとも知らずに。




.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ