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□夏風邪(三井)
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耳を澄ませば、外では蝉がジーワジーワと鳴く音がする。本来こんな日は俺は夏真っ盛りのうはうはのバケーション中だ。そう、本来なら。今俺は布団の中で頭痛に悩まされている。さみぃ。超頭ガンガンすんだけど。所謂、夏風邪というやつらしい。だから俺は部活を休み、真昼間からテレビもつけず寝てる。マジでダルい。寝たまま時計を見ると15時半過ぎ、そろそろ部活も終わったころだろう。うちの後輩は偉大なる先輩にお見舞いもねえのか。後輩たちの顔を痛む頭で思い出してみたけどそんな気の利いたことするやつは誰もいねえなと思った。ちらりと携帯を見るとチカチカとライトが点灯していた。受信箱を確認してみると新着メール3件。

From: 桜木
Sub : みっちー!
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本文なし
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From: 宮城
Sub :
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三井さんも風邪ひくんすね(笑)

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From: 彩子
Sub :
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明日午前練になりました。
間違えないようにしてくださいね。

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桜木のは本文がねえ。けどまだ思いやりが伝わってくる。宮城てめぇ馬鹿にしてんだろ、心配の気がかけらも見えてこねえよ。(笑)ってお前。彩子なんて風邪についてノータッチだ。一番こいつがひでぇ。「お大事に」くらい言うかわいさを持ち合わせろ。携帯画面に向かってぶつぶつ言っていると、メールも送ってこないあの可愛いげのない後輩がいたのを思い出した。暇だし電話をかけてやろう。アドレス帳のラ行なんて俺の携帯にはあいつの名前くらいしか登録されてない。



『もしもし』
「よう」
『声、犯罪者みたいっすね』
「大丈夫ですかとか聞けねえのかよ」
『ダイジョウブデスカ』
「うっぜ、てめうっぜ」
『やっぱ迷信なんすね』
「何がだよ」
『ナントカは風邪ひかない』
「なっ、馬鹿じゃねえし」
『切っていいですか』
「待て待て」
『これから水戸黄門やるんで』


そう言って流川は電話を切った。急に胸に込み上げてきた孤独感は半端なかった。明日は絶対部活に行こうと思う。



三井さん<<<<<<<<水戸黄門

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