BOOK

□本当の気持ち
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「こ、孤邑くん!?どこまでいくの」

購買からずいぶん離れてしまったが孤邑くんが手を離してくれる気配はない

「もう少しですよ〜」

彼はそう言うと、わたしの手を握り直してまた歩きだす。いまさらながら彼と手を繋いでいることを意識してしまい恥ずかしくなってしまった。

「〜♪」

そんなわたしの気持ちを知ってか知らずか孤邑くんはご機嫌な様子で歩きつづける。せめてこの赤くなった顔だけは見られないようにとわたしが無駄な抵抗を試みていると………


「先輩つきましたよ」

「…え」

ふいに孤邑くんに声をかけられ顔をあげるとそこは、一年校舎の裏に見たことがない庭園があった。

「こんなところあったんだ…」

「先輩は知らなかったかもしれませんが、今年から一年がたくさんの植物をここに植えて育ててたんですよ」

たしかに植えられている植物はまだ少なく、花を付けているものも少なかったが、そのささやかな植物たちの空間がとても心地の良いものに思えた。

「先輩は園芸部だし、こういうの好きですよね?俺は植物よくわかんないですけど…」

孤邑くんが近くに咲いている小さい花に目を向け

「こういう雰囲気は俺も好きかもです」

そう言って優しく笑った。そんな孤邑くんが綺麗だなんて思ってしまった自分がいて…、

「あ、ありがとう」

恥ずかしくなって、つい目線を反らしてしまった。

「………」

「………」

あれ…わたしが目線そらしたせいでこんな沈黙する空気になっちゃったのかな…

と、不安になった沙弥がとりあえず孤邑に声をかけるが

「孤邑くん…?」

「っ……すいません。」

「……?」

孤邑くんの様子が少しおかしいような気がするけど、気のせい…?
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