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□雪村千鶴の憂鬱
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つ、ついにたどり着いてしまった… ああ 感情にまかせて部屋まで最短距離で歩いてくるんじゃなかった。 そんなことを考えながら部屋の扉の前で千鶴が立ち止まっていると

「何故立ち止まる、はやく入れ」
後ろから風間先輩の上機嫌な声が聞こえてくる。先輩、なんでそんなに上機嫌なんですか。

「は、はい…」

ずっと扉の前に立ち止まっているわけにもいかないので仕方なくドアノブに手をかけ、扉を開ける。

「ほう…」

千鶴の部屋は小さい花柄の壁紙にカントリー調の家具が置いてあり可愛らしいシンプルな部屋である。風間先輩は部屋全体を見渡し、最終的にベッドのほうを注視しニヤニヤしている気がするが、怖いのであえて何も言わないでおく。

「先輩、とりあえずお茶を持ってきますので、座って待っていてください!」

バタンッ

平静を装って扉を開け部屋をでてお茶を汲みにいく。ああ、なんで風間先輩はあんなに上機嫌なんだろうか、家に入ってから妙に上機嫌だ。不機嫌な先輩も怖いが上機嫌な先輩もある意味怖い。そんなことを考えている間にお茶が汲み終わったので、お茶を持って部屋まで戻った。勇気をだして部屋の扉を開けると…………

「ふん、遅かったな」

ベッドの上に踏ん反り返って腰掛けている風間先輩が目に入った。
「な、な、な、人の…べべべっ」
「お前はどこに座れと指定しなかっただろう」
「だからって…べ、ベッドは…」
「どうした、何を期待しているのだ?その願い聞いてやらんでも…」
「ちっ!ちがいますっ!期待なんてしてませんっ!!!! はやく…っ降りてくださいっ」
「なんだ…慌ただしい女だな…、そんなに照れなくてもよいものを」
「照れてません!!!!!!!」

なんとか風間先輩をべ、ベッドから引きずり降ろし、ソファの上に座らせた。隣でクツクツ笑う風間先輩を見ているとやっぱり先輩を部屋にひとりにさせたのは失敗だったと後悔する。
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