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□風紀委員のお仕事
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「…また遅刻か」
今日もまた風紀委員こと斎藤先輩の声を聞くことになろうとは…
千鶴の目の前には腕をくんで渋い表情をした斎藤がいた。走ってきたばかりの千鶴は斎藤に目を合わせることもできず膝に手をついて呼吸を整えるのが精一杯である。
これも、絶対沖田先輩のせいだ…! 途中までは時間に余裕あったのにまた平助くんをからかったりするから…わたしが必死に時間がないことを訴えてるのに二人とも聞いてくれないし…
などと千鶴がぶつぶつ考えていると背後からいきなり手を引かれた、
「千鶴ちゃん、逃げるよ」
「え!?沖田せんぱ…」
ニヤニヤ顔(こういう顔の沖田先輩には近づいてはいけない)の沖田先輩に手を引かれ、さっきやっと整えた息がまた上がる。
「ちょ、千鶴!総司ぃ!?」
後ろから取り残された平助くんの声が聞こえた気がするが、わたしにはどうすることもできないです…ごめん、平助くん…っ
それよりも背後から聞こえてくる風紀委員さんの叫び声のほうが私には重大である
「総司っ!止まれ!」
最初逃げ出したわたしたちに呆気にとられていた斎藤先輩だったがすぐに戦闘体制に入り、わたしたちを追い掛けてきた。…非常に怖い。
「先輩っ…はあっ…追いつかれ、ますって…」
前を陽気に走る先輩にどうするつもりなのか息絶え絶えに問い掛ける。
「大丈夫ダイジョウブ♪」
いや、先輩は大丈夫でもわたしは、もう限界なんですけど…っていうか私はちゃんと遅刻を謝ろうとしたのに先輩のせいで絶対勘違いされてる〜っ 昨日も遅刻だったのに(沖田先輩のおかげで)これじゃあ、風紀委員に目をつけられる…
とかこれからのことを真剣に悩んでいると
「僕は逃げられるからね」
沖田先輩の不吉な声が聞こえた。
「え…」
嫌な予感がした千鶴が沖田にその意味を問い掛けようとしたその時。