BOOK
□本当の気持ち
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今日もいつものように凌さんと学校に向かっていると。
「せ〜んぱいっ」
いきなり背後から聞き慣れた声がした、恐る恐る後ろを振り返ると
バフッ
「え、孤邑くっ」
「先輩って抱きごこちがいいですよね〜」
孤邑くんに後ろから抱きすくめられ、彼の声がすぐ耳元で聞こえて、わたしの心臓は朝から忙しくなる。
わたしが顔を真っ赤にして口をぱくぱくしていると
「こっ、孤邑!彼女から離れろ!」
慌てて凌さんが孤邑くんを剥がしにかかる、
「え〜、大蛇先輩ばっかり沙弥先輩を独占してズルイですよ〜」
でも孤邑くんはからかうような視線を凌さんに向けてわたしから離れようとしない。
「ど、独占なんかして…と、とにかく!離れろ…っ」
凌さんがなんとか孤邑くんを剥がしてわたしと孤邑くんとの間に距離ができたが、背中に孤邑くんの熱が残っている気がしてまた顔が赤くなってしまう…
「沙弥?大丈夫か?」
「う、…うん」
凌さんが心配そうにわたしに話し掛けてくれる。まだ心臓が落ち着かないが、なんとか返事をした。
「先輩?顔赤いですよ〜」
「…っ!」
ふ、とまえを見ると孤邑くんがわたしを覗きこんでいてまた近くなった距離に心臓が跳ねた。
「な、なんでもない…か ら」
「ふ〜〜ん」
孤邑くんが笑顔でわたしを見つめてくる。孤邑くんに見つめられるとわたしの考えてることが全部見透かされてそうで、余計に顔を赤くして俯いてしまった。
「ほら、はやく学校にいくぞ」
「え、凌さん?」
黙ってこっちを見ていた凌さんにふいに腕を捕まれ引っ張られる。なんだか凌さん怒ってる…?どうしたんだろ…、と考えていると
「嫉妬ですか〜、大蛇先輩」
孤邑くんが後ろから、からかうような、でも真剣さを含んだ声で凌さんに問い掛ける。でも凌さんさんは聞こえなかったようにわたしを引いてどんどん歩いていってしまう。
「…っ、凌さんっ…いたっ」
「…っごめん」
わたしが腕の痛みを訴えると、凌さんは、はっとして腕を離し振り返ってわたしに謝った。
「沙弥…ごめん…」
「え、いや大丈夫ですよっ」
わたしが答えると凌さんの表情がいつもの優しい表情に戻った。ほっとしてわたしも笑顔になる、
すると…
「大蛇先輩〜、おいてかないでくださいよ」
後から孤邑くんが追い付いてきたらしくニコニコしながら凌さんに話しかけた。凌さんは孤邑くんを見たが、すぐに視線をそらして
「早くいくぞ。」
それだけ言うとまた歩きだした。
孤邑くんは肩を竦めて、
「沙弥先輩も行きましょ〜。」
わたしに声をかけて歩きだす。
二人は喧嘩してるのかな…?
とか考えながらわたしも二人の後を追うのだった。