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□雪村千鶴の憂鬱
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「はあ〜…」

千鶴がため息をつく原因であるメールを玄関のまえで眺める
『今からいくから玄関にいろ』

「はあ〜…」

何度目かわからないため息をつきながら、そのメールの主である風間をなんだかんだ玄関で待っている自分に千鶴は自問自答してみる。 わたしは風間先輩が好きなんだろうか? …いやいや、好きな相手を待つのにため息なんてつくわけないし、でも結局は玄関にいるわけで… ていうか…わたし風間先輩と付き合ってるわけでもないのに なんで風間先輩を家に呼ぶことになったのだろう… …そんな今更なことを考えていると ふいに目の前が暗くなった。

「お前は百面相が得意なのか」

聞き慣れたくないが聞き慣れてしまった声に嫌な予感を覚えつつ顔をあげると、…やっぱり不機嫌そうな顔をしている風間先輩がいた

「か、風間せん ぱ…、オハヨウゴザイマス」
「もう昼だが」
「お、おコンニチハ」
「まだ寝ぼけているのか、さっさと中に入れろ」

人の家にお邪魔するのに中に入れろは無いんじゃないですか、と言いかけたが 風間先輩にそんな常識を求めても「妻の家に夫が入ることの何が悪い」とか意味のわからないことを言い返されるにきまっているので辞めておいた。 仕方なく玄関に入る風間先輩のあとに続く。

「お前には父親がいるだけだと聞いていたが…今日はいないのか?」

誰から聞いたんだそんなこと、と言うのを我慢して、質問に対する答えだけ答える。

「あ、父様はお医者さまなので朝早くから夜遅くまでお仕事なんです」

「そうか、」

ん…?いま風間先輩の口角があがった気がしたのはわたしのきのせいだろうか そうだ きのせいだ、そういうことにしておこう。
「おまえの部屋に案内しろ」
わたしが思案していると風間先輩がまたふてぶてしい態度でそう命令する、まあたしかに今回の目的である勉強会の為にはわたしの部屋がいいのかもしれないし、わたしもそのつもりだったが… ………なんだか命令口調で言われたら反抗したくなってしまう

「いきなり部屋に案内しろだなんて先輩変なこと考えてないですか?」

「なんだ、してほしいのか?」
「ち、違いますっ」

クツクツと笑う風間先輩を見ているとやっぱり余計なこと言うんじゃなかったと後悔する。

「あ、案内しますからついて来てくださいっ」

悔しいので平静を保って廊下を先に歩く。 後ろでニヤニヤしている風間先輩の気配を感じながら、やっぱり家に入れるんじゃなかったといまさらながら後悔する千鶴だった。
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