BOOK

□雪村千鶴の憂鬱
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ガバッ

「ひゃっ…せんぱ…!?!?」

ちっ…意識が戻ったか。
風間は千鶴の顔をちらりと見ると目線を戻し、何事もなかったようにまた胸元への距離を縮める。

「先輩!?何して…っ」

風間の唇が千鶴の肌に触れ、千鶴は声を押し殺す。その反応に機嫌をよくした風間は抵抗する千鶴の両手を片手で押さえ付け、わざとリップ音が聞こえるように続けて千鶴の肌に口づける。

「…ひゃ、…ゃだ…せんぱ…」

真っ赤になっている千鶴を見て風間の口角が上がる。…やはり意識があったほうがやりがいがあるな、 などと考えながら今度は首筋に強く口づけた。風間は自分の跡が残ったことに満足しながら指を滑らせ千鶴の胸に触れようとしたところで、

「ひっく…ぅ……ゃ…」

千鶴が泣いていることに気がつき、手を止めた。

「…………。」

風間は無言で千鶴の手を離し、千鶴から離れる。解放された千鶴は慌てて布団のシーツを引き寄せ風間の様子を伺った。

「…あの、」

「…早く服を着ろ。」

潤んだ瞳の千鶴と目が合えば、また手を伸ばしてしまいそうになるので、目線を逸らしたまま言う。
ちらりと千鶴のほうを見ると、…風間先輩が脱がしたんじゃないですか、とブツブツ言いながら乱れた服装を整えていた。その手首はきつく両手を押さえ付けてしまったせいで赤くなっていた。

「……。」

風間が無言で千鶴に近づき千鶴の手首に優しく触れる。千鶴が驚いて風間を見ると目を逸らしたままの風間が声を漏らす、

「…すまなかった。」

「………え。」

風間がまさか謝ると思っていなかった千鶴は驚いて固まってしまった。二人の間に沈黙が流れる。風間がいぶかしんで千鶴を覗き込むと

「…………ぷっ。」

千鶴の笑い声が沈黙を途切れさせた。

「っはは…」

「なぜ笑う」

「だって風間先輩が謝ると思わなくて…っ」

まだ潤んだままの目で千鶴が笑う。笑われていい気はせぬが、千鶴が元気を取り戻したならばまあ、良しとするか…などと考えた風間の口元に笑みが浮かぶ。



そんな風間の顔を見てやっぱり風間先輩は…いつもの、ぶっきらぼうな顔じゃなくて笑顔のほうが格好よく見えるな〜、とか考えてしまった千鶴なのだった。

…その後、千鶴が自分の首筋についたキスマークを発見し、鏡の前で激情するのはまた別の話。●●
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