私が異世界で死なないための10の法則

□第1法則
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っとまあ、此処までは普通にどこの世界でも変わりなさそうな会話だがこの後のものは、やはりこの"魔法世界"ならではなのだろう。


会計を済ませたところで店に来客の気配がないことを確かめ、ミズがなにやら短い杖らしきものを胸から取り出す。

そしてその杖を軽く振るとーーー刹那、店の窓のカーテンが一気に閉まり、出入口のドアがガチャンという音と共に旋錠される。
その後ドアに軽い物がぶつかる音が聞こえた。恐らくカードをオープンからクローズに変えたのだろう。
あたりを見渡しちゃんと"魔法"が成功していることを確認したミズが杖を上着のポケットにしまう。
かわりにというように煙草を取りだし、また最初のように燻らせはじめた。


「いっちょ、あがりっと。んで、送り先はホグズミートでいいのかい?」
「えぇ、お願いします。すみませんねぇ何から何まで」
「遠慮なんかいらないさ。それにギンコに任せたら折角の豆がどうなったもんか知れてるからね」


やれやれとわざとらしく肩を竦めて煙を吐き出したミズに苦笑を返す。


「どうにも、何かを送る系の魔法は苦手で…」
「"苦手"ねぇ…?まあアンタは意外に大雑把だからねぇ。けどギンコのソレはそんなレベルの話じゃないだろう?」
「アハハハ……」

乾いた笑いを溢す私を見てクツクツと笑うミズに恨めしそうな目を送るとミズは両手を軽く上げる(所謂降参ポーズだ)。そんなポーズも様になるのだから、美人って羨ましい。


「怒らないでおくれよ。ほら、送っておいたからさ」
「ああ、ありがとうございます」
「ついでにギンコも送ってやろうか、え?」
「…ミズ、顔が笑ってますよ。私をからかって楽しまないでくださいよ…、まったく」
「あはは、ギンコの反応が楽しくてねつい」
「本当に貴女は…」
「んで、今日はこの後どうするんだい?」
「ダイアゴン横丁によろうかと」
「そりゃまたなんで」

そういいながら先程のように杖を振りカーテンやらなんやらをあける。薄暗かった部屋に明かりがさしてきて少し目を細める。

「いえ、ただの気まぐれですよ」
「"気まぐれ"ねえ」
「では、また」
「はいはい、またのお越しをお待ちしております」


冗談めかした言葉と共に煙を吐き出したミズに軽く礼をし店を後にする。
ミズの店からダイアゴン横丁まではそう遠くはない。バスを乗り継げはすぐつくだろう。
――バスを乗り継ぐ魔女なんてそうそういないな
そう思いながら様々な人が行き交う中に銀子は紛れ込んだ。




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