詩歌いは唄う
□読書
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僕は本が好きだ
ひとりでいる僕は
本を読むとその世界の住人になる
その世界で
主人公であったり
主人公を導く人だったり
主人公と敵対したりする
本の世界に入ると
楽しくて楽しくて楽しくて
仕方が無い
僕は夢を追ったりするし
僕は冒険をしたりするし
僕は夢を叶えたりするし
僕は幸せを感じたりするし
僕は泣きながら人を殺めたりする
僕は恋をしたりするし
僕は告白されたりするし
僕は失恋したりするし
僕は両思いになったりするし
僕は結婚したりする
僕はすごく嫌な人だったりするし
僕はすごく優しい人だったりするし
僕はすごく好かれてたりする
本の世界では
違う性格で
楽しくて笑って
悲しくて泣いて
苦しくて
悩んで
葛藤する
現実から掛け離れた世界だったりする
その世界を感じたくて
ひとりになったりする
だんだん
続きが楽しみになる
読みたくて読みたくて読みたくて
仕方なくなるのに
最終話
最終巻
最後のページ
だんだん
最後に近づくと
楽しみで仕方ないのと一緒に
胸が苦しくなり
ざわざわしてくる
この話が終わってしまうのが
嫌なのだと気づいた
本を読み終わってしまう
それは死に似てる
もう一度
同じ話を読むことはできる
だけど
やはり
その話は終わってしまうのだ
本の世界では
幸せなまま終わったりするし
可哀想なまま終わったりする
すごく良かった
すごく面白かった
本を読み終わったばかりだと
感動と
ドキドキと
ふわふわと
そんな気持ちでいっぱいなのに
少し時間が経つと
胸にぽっかり穴が空いたような
そんな気分になる
その話が終わってしまった事実
主人公はその話が終わった時点で
もう
それ以上の夢を見ないし
それ以上の冒険をしない
それ以上の挑戦も無くなるし
それ以上の苦しみを感じない
それ以上の幸せを感じないし
それ以上のドキドキも感じない
僕が
続きを 続きを 続きを 続きを
続きを 続きを 続きを 続きを
続きを 続きを 続きを 続きを
読みたくなってしまうのは
今までよりももっと
もっと
夢を見たくて
もっと
冒険をしたくて
もっと
ドキドキしたくて
もっと
笑っていたくて
もっと
幸せを感じていたくて
もっと もっと もっと
主人公と一緒にいたいからだ
もう彼等に彼女等に
会えなくなってしまうような
そんな気持ちになってしまうのが
嫌なんだ
僕は本が好きだ
本当に大好きだ
だけど
本の世界の時間が
そこで止まってしまうのが嫌だ
すごく嫌だ
本の終わりは
死にとてとも似ている
2015.02.17