月とアイス

□先生
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「だから、いつから好きなのかはよくわからないの。気付いてたら好きになってた…」

「へぇ」



的場君は興味なさそうに返事をした。



「興味ないなら聞かなきゃよかったのに」

「いや、別に興味ない訳じゃないけど」



的場君、ホントに誰にも言わないでくれるのかな…。不安だな。



「…でも、アンタ等って両想いになれても付き合えないよな」

「え?」

「だって、黒田も一応先生だろ?生徒と付き合うとかやばいんじゃねぇの?」



私は、その言葉に何も返せなくなってしまった。




 ◇◆◇◆




「つか、俺帰るわ。じゃあな」

「あ、うん、バイバイ」



俺は、廊下に出てドアを閉めた後にもう一度保健室を振り返った。



「アイツ、あれで明るくしたつもりかよ」



声が震えてた。


明るく笑ったつもりだろうが、笑えてなかった。



「黒田もアホだな。俺だったらあんなへましねぇな」



まぁ、本気で女を好きになったことなんかないからわかんねぇけど。




 ◇◆◇◆



的場君が出て行った保健室は静かだった。



「…別に、付き合いたいとかそういうのじゃないよ。ただ、ただ傍に居たいだけ」



呟いた言葉が悲しくて、鼻の奥がツンとした。



「浮かれちゃって、馬鹿だな。キスくらいで浮かれちゃって…」



自分の唇にそっと触れた。



感触が残ってるの。

先生がキスをしてくれた感触が残ってるの。



何で?

なんで、先生は私にキスなんかしたの?



一瞬でも思ってしまった。


先生は私が好きなんだって。

両想いかもしれないって。



先生に聞きたい。


だけど、先生に聞きなくない。



先生の傍に居られなくなりそうで。



「先生が来る前に帰っちゃおう」



私は、暗い気持ちを打ち消すように明るく言った。



帰らなくちゃ…。

だって今は、ダメ。

今、先生に会ってしまったら今日のことを忘れられなくなってしまう。



先生のことが好き。


好きだから今日のことは忘れてしまおう。



明日ここへ来ても、昨日までと同じでいれるように。



「先生…私、傍にいれるたけでいいから。傍にいれるだけでいいから…」



両想いになっちゃダメなんだ。

先生の傍に居られなくなっちゃうから。



「私は先生の傍にいれるだけでいい」



私は、自分に言い聞かせるように呟いて保健室から出た。


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