DISTINY

□君を想うからこそ
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息を切らしながら光のもとへ走る
体力なくなったな…なんて
走りながら冷静なことを考えていたら
向こうから歩いてくる人影に
留守電の声を思い出した

それは、巧の声で
"結婚を前提にもう一度付き合ってほしい"
というものだった


『…巧』


その言葉がぐるぐる駆け巡った
その理由は、目の前に現れたのが紛れもない本物の声の主だったから


「そんな急いで…
誰に逢いに行こうとしてたの?」

『…。』

「留守電聞いた?」

『…聞いたよ。』

「いい返事を期待してたんだけど…」

『…ごめん』

「…。」

『好きな人…いるの。』


やっと出てきた短い言葉
きっと巧が嫌いなんじゃない
けど、光が好きすぎてもう戻れない


「学生…だっけ?」

『え…?』

「制服のやつと歩いてるの
何回か見かけたから。」

『…。』

「年下…か。
佳奈が年下に惚れるとは
思わなかったな。」


巧が小さく笑う
年の差が何?…ってそう思ったのに
口からはなんの言葉も出なくて


「考えといてよ、留守電のやつ」

『それは…!』

「今は聞かない。
返事は、また今度。」


そう言って私の横をすり抜けると
覚えのある香りがしばらく残っていた


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