DISTINY

□偽ることが苦しくて
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謙也くんに聞いた言葉を
繰り返しながら家路を歩く
日が落ち、雨雲に覆われて
辺りは暗くなっていた

そんな中、店のガラス窓越しに見えた
幸せそうに笑う高校生のカップル
静かに降る雨を受け止める傘を
いつもより少し重たく感じながら
私も、前に進まなきゃ…そう思った


「佳奈さん!!」


黙々と歩き続けて家の前にかかったとき
突然、名前を呼ばれた
今もまだ、愛しいその声


『ひか、る…』


雨の中傘もささずに走ってきた光は
全身に雨が滴り息が切れている


『…光、久しぶりだね。』


そう言って無理に作った笑顔は
不自然だったかもしれない


『どうしたの?
そんな息まで切らして…』

「謙也さんに、学校で
佳奈さんに会ったって聞いて
…仕事は?」

『うん、まぁ今日は…ね』

「俺、佳奈さんが
…泣いてるんやないかと思って、」

『どうして?』

「佳奈さん
こないだから何か無理しとる。」


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