DISTINY

□強がり
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"あの日別れた彼のこと
聞いてもええですか?"


今日は、財前くんにそう言われ
巧の話をしていた


『…あの日
私が泣いていたのは
悲しいからじゃなかったんだよ?
…自分が情けなくて
悔しくて泣いてたの。』

「…悔しい?」

『浮気症だったの、彼。』

「はぁ…」

『いつか巧とは
別れるだろうって
思ってたのに先伸ばしで、』

「へぇ…」

『付き合い割りと長かったし
好き…だったんだけどね。
好きなとこも多いけど
嫌いなとこも多かったかも…』


でも、この恋はもう過去のこと

今、私はたぶん
目の前の彼を好きになりかけてる
数ヶ月前の失恋から
また人を好きになるなんて…
その相手が年下の学生なんて
誰が予想できただろう?

あの日の再会
財前くんに会ったことで
それまでのことが
変わってしまった

でも、好き…なんて
財前くんに対して
この言葉を口にすることは
許されるのかな…?

そう思った時だった


「その話、
やっぱもうええですわ。」

『え…?』

「なんか…嫌やから
三崎さんの口から
誰かを好きだった話…」



変な期待をさせるセリフ
胸が高鳴って落ち着かなくて
咄嗟に今まで聞かなかった話題を振る

本当は聞きたくないのに…



『財前くんは今、
好きな人…いないの?
彼女とか…!』

「おりますよ、好きな人。」


その一言が
静かな図書室に響いた


.
 

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