DISTINY
□気になるのは
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あの日
部活が始まる少し前
鍵をかけ忘れたことに気付いて
図書室に戻ったんや
案の定、鍵も
ついでにドアも開いとって
誰もおらへんハズの図書室
何故かそこから聞こえた
溜め息と声
俺が声をかけたんは
見覚えのある顔やった
よく学校で見かけるその人
三崎さん、やった
夕暮れの図書館で見たんは
女の人の涙やった
無理矢理作った笑顔に
どうしようもなく胸が痛んだ
いつもならきっと
放っておいたのに
気になったんはなんでやろ
じっと見つめられて
熱くなるのを感じて
思わず顔を逸らした
三崎さんが帰ったあと
柄にもない"運命"なんて言葉を
思い浮かべてすぐ消し去った
鍵かけ忘れたのなんか偶然や…
そう言い聞かせていた
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