不器用な相思相愛
□お互いの命が逢いまみえる時
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(Upload-2011/01/05)
(LastUp-2011/02/05/SAT/pm09:15)
ある年の初春、俳優界に逸材が現われた。
その人物の名は諏櫻 汰玖巳と言った。
汰玖巳の演技に誰もが魅入られた。
感情移入は瞬間で出来、その色のある声に誰もがはまり込んだ。
もう今後ここまで完璧な人間は出てこないだろうと、囁かれた中、その人物はその1作品で忽然と姿を消した。
the 1st Story
お互いの命が逢いまみえる時
〜この時から、もう…お互いを――〜
〜サイド:蜜瑠〜
15歳の春――
俺はヒイラギ学園高等学校へと入学した。
「ここが、ヒイラギ学園……。」
ここで、新たなる俺がスタートするんだ――
敷地内を歩いていると、前方での話声が聞えてきた。
「キミキミ、新入生? 中等部普通科はあっちだよ。」
その後、そう言われた彼女は物凄い形相をしていそうな声で反論し、迷わず高等部の校舎へ向かって行った。
あの子も同じ高等部声科なのか・・・
そう思いつつ、彼女の数メートル後ろを歩いて行った。
校舎内に入り、彼女に追い付く。
俺は、それを特に気にする事なく、上履きへと履き替えた。
しかし、そこで止まってしまった。前に居る彼女が止まってしまったので、俺も止まらざるを得なかった。
彼女の目線の先にはAQUAの2人がいた。しかし、俺はそれも気にすることなく、只立ち尽くしていた。
「――ごめん、そこ通してくれない?」
「!」
ふと、俺の耳元で聴こえたその声は、俺の脈を一気に押し上げた。
ドキドキしたのかって?
…まぁ、それもあるだろう。だけど、一番の理由はそれじゃない。
この声は間違いなく久遠千里。
俺が声優界へと向かうきっかけとなった人物だ。