深い夢
□1《はじまり、はじまり》の段
1ページ/2ページ
ふわふわ
ゆらゆら
体も、意識も
心さえも、浮き上がり、漂う。
留まらず、ただ身を任せていた。
まるで無重力の世界。
瞑っているのに感じる眩しさにまぶたをあげると、視界全てが青だった。
ここは、どこだろう。
起き上がりたいのに体は動かない。
呟いたつもりの言葉は掠れた呼吸となって口から漏れていく。
視線だけで周りをゆっくり見渡してみる。
上のは…空。
これは…海…?
青の正体をぼんやり認識したけど、いくつも浮かび上がりそうな疑問全てが不思議と消えていく。
再びまぶたを下ろし、無重力の世界に身を任せると…なぜか涙が頬を伝っていった。
(あぁ、もう会えない)
『誰』の事かもわからないのに、ただ漠然とそう感じた。
(もう、会えない…)
浮ついていた心が、とぷんッ…と静かに深く沈んだ気がした。
止まらない涙は、海と同じでしょっぱいから…きっといくら流れても、誰も気づく事なんてないだろう。