涙でかける橋…

□3章
3ページ/4ページ


練習の日々が終わり、いよいよ運動会当日

『いい天気になったね〜〜ッ』
優「日焼けする…;」

相変わらず優衣は、小学生のくせに大人びた雰囲気をかもしだしている

『プログラム何番だっけ?全員リレー?』
優「6年生は1番ねぇ。学級対抗リレーがおおとりみたいね」

まずは、みんなで協力する全員リレー

「「勝つぞぉぉ!!!!!!」」

全員で肩を組み、円陣をくんでいざリレーへ

テキトーに組まれた順番だから勝てる保証はないが…きっと勝てる

そう柚希は信じていた

「よーい…」

パァンッッ!!!

ダッと一気に1番走者が走り出す
さすがに6年生にもなると男子の足が速い

女子は少し遅い感じもする

今のところ、1組は3位

『さすがだなぁ…』
優「ほら!柚希の番だよ!」
『あっ!!』

すぐにスタートラインに立つ
向こうから走ってくる人だけを見てうしろに手を差し出す

リードして、少し走り…手に固いバトンが触れた瞬間走り出した

全力で!

これでもか!というくらいのスピードで走った

1人抜かし…もう少しで抜かせるところで次の人にバトンを渡した

『はぁ…っっ』
優「クラスのみんなテンションMAXだったわよ!
もちろんあたしもだけど!」

クラスのところに戻れば、みんなが「おつかれ♪」と声をかけてくれた

『ありがとう!』

結果は2位

惜しくも1位にはなれなかったけれど、団結力は高まったし良かったと思う


それに…

奏の走る姿は本当にかっこよかった
柚希が1人抜かした後、また抜かされそうになったとき奏が挽回した

きれいなフォームで、走り切っていた

その姿を、どうしても目で追ってしまっていた――…

**

ダンスや組体操、玉入れなどの学年ごとの競技が終わり、いよいよメインの学級対抗リレーの順番がやってきた

今までやってきた練習を信じて、代表8人で結束した


学年ごとにポイントでクラスごと競う形式になっているのだが…
今のところ、どのクラスも接戦でこの学級対抗リレーで1位をとったところが優勝!

という感じだった

これは絶対に勝たないと、クラスのみんなに申し訳ない


―…いよいよ、スタート地点に立った

横で並んでいる7人と、向こうで応援しているクラスのみんな。

全員の視線が柚希に集まっている

1番走者はなんと、周りが全員男子だった

1組だけが1番女子。

『(よし…っ負けない!!)』

これで負けたら一生の恥だ!!
と言い聞かせ、バトンを先生から受け取る


「位置について〜…」

また、あの練習の時と同じように緊張が体中に走る

一瞬の静寂…
周りの音が聞こえない…

「よーい…っ」

パァァァンッッ!!!!


ピストルの音が鳴ったとほぼ同時に、一斉に走り出した

クラスのみんなの応援がうっすら耳に入ってきた

その時、横からザッと何かが通り過ぎた

…そう抜かされている

はっと気付いた時には離されてしまっていた

『(まずい…っ)』

最初は1位だったのに、いつの間にか3位あたりまで落ちていた

『(イヤだ…ッイヤ…!)』

そう思った時、奏が視界に入った

奏…っ

『奏…っ!!!!』

声に出して叫んでいた

パシンッと奏の手にバトンを渡した時、一瞬…

「まかせろ」

という言葉が聞こえた気がした…

クラスの列に戻ると、「おつかれ〜!」とみんな声をかけてくれた

『…うんっありが…と』

1番後ろの列に並び、体育座りをして
走っている奏の姿を見た

1人抜かしたようで、わぁっと歓声があがる

思わず…腕の中に頭を埋めた
視界がぼやけてしまうから

自分のせいで、クラスのみんなが悲しむ
自分のせいで、クラスのみんなが優勝できない
自分が1番で奏にバトンを渡していれば…っ

次々と後悔があふれてくる…


ザッと近くに足音がした
隣に、奏が座ったのが分かる

見られないように、必死に隠した

ぐっと腕に力を込め、頭を腕の中に埋める

その時、頭にふわっと何かが触れる

鳴「お前は…頑張ったよ。だから…なんつーかさ…泣くな」

反射的に顔をあげると、奏が一瞬ビックリした顔をしてすぐに目をそらしてしまった

うしろを向いた状態で

鳴「おっ俺のおかげで今んとこ2位だし。」

といつも通り、皮肉をくわえて。

『…うん…っ』

その言葉にどれだけ救われただろう…
まだ、素直に「ありがとう」とは言えないけれど…

心の変化は大きいものだった…


Nextあとがき†→
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ