涙でかける橋…

□3章
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運動会が近づき、いよいよ練習も本気モード

『田中くん速いよ〜〜〜!!!』
優「ほんと、みんな速くなったわね」
『だよね♪』

フンッと腰に手をあてて、自慢げにする柚希

ふと、目を開ければ、奏の姿が

『(何してんだろ…)』

奏は1人、はじっこにいて突っ立っていた

つぎの瞬間、ふわぁっと風が駆け抜けるように奏が走った
校庭のはしっこにいたはずなのにもう真ん中あたりまで来ている

『(速っ…!)』

思わず目を見張ってしまうほど…
かっこよかった

ぼーっとしているとふいに肩を叩かれた

『!?』

バッと振り向くと、そこには…

鳴「お前、何やってんの?」
『えっ?何って何が?』
鳴「お前、学級対抗リレーの選手だろ。
練習サボんのかよ」

トンッと背中を押され、前のめりになる
前をみれば奏はもう前を歩いていた

『まっ待ってよ!!』
鳴「お前、意外と足速ぇよな」

『意外…ですか』
鳴「あぁ。最初、クソ遅いのかと思ってたしな」
『ムッカ!!!!』

ははッと笑う奏
何故か、自分の頬が熱くなる


学級対抗リレーとは、各クラスの代表の男女4人、合計8人で走るリレーのこと

柚希は運動神経はいいため、リレーの選手になっていた

もちろん、奏と天野もメンバーだ

柚希の走る順番は1番
奏が2番だ

つまり、柚希が奏にバトンを渡さなきゃならない


『うぅ…よりによって奏か〜〜;』
鳴「不満かよ」

むっすぅとした顔で背後に立つ奏

『いっいえ!めっそうもございません!』


走る順番で、1番と2番、3番と4番のようにまず2人1組になって練習することになっていたので柚希と奏がペアになっていた


『じゃぁ、行くよ!!』
鳴「おぉ」

クラウチングスタートではなく、立ったままのスタート

友達の遠野さんに、手でパチンッとしてもらうことになった

遠「いちについてぇ〜…」


この時の瞬間は、練習だとしても緊張する
鼓動が速くなり、すっと周りの音が聞こえなくなる錯覚になる―…


パチンッ!!


手の叩く音と同時に、柚希は走り出す
奏が待つ場所へ

あの手のひらへ…!
つか
『はいっ!!!!』

ポスッ

奏手の平にバトンが渡る
キュッと握って奏も軽やかに走って行った


『はぁ…っ』
優「おつかれ」
『ありがと…』
優「また速くなったんじゃないの??」
『そうかな?だといいけど…』

きっと、走る先にあの人がいたからかも…
なんて考えは心の中にしまってしまう



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