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□ウサギさんのはなし
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こんにちは、名無しです。私はいま、トランクスくんに勉強を教えてもらっている真っ最中なんです。そう、編入試験に向けた勉強ですよ。けど。






この状況はなんだ。



「次間違えたら明日の名無しの下着上下セットは俺が選ぶね」

『無理!』

「これ3分で出来ないなら一週間一緒にお風呂、俺の背中流してもらうから」

『無理無理!』

「ここ完全回答しか認めない。何か欠けてたら週末名無しのコスプレ撮影大会開催します。メイド服に、ナース服に…女海賊と、バニーちゃんもいいな。あと水着ね」

『ほんっと無理!』



最初は、本気ではないよね?とは思っていた。私のやる気を起こさせようとしてくれてるのかな、みたいな。
けれど、ガチで目をキラキラさせ始めたトランクスくん…淡い期待は消え失せ、背筋の震えが止まらない。彼なら実行しかねないよコレ!!

………こんな波乱な午前はあっというまに過ぎていき、罰則を回避するべくシャーペンを走らせること4時間。気づけば疾っくにお昼を回っていて、そろそろ休憩をとトランクスくんが眼鏡をはずした。

え、うそ!!休憩?やった!!
や…やっと終わり!!



『たすかった…』

「はぁぁあ〜…」

『…なんでトランクスくんが項垂れてるの』

「…そんな必死になることないじゃんか」

『な、なるよっ!なるでしょうよ!!』



やっぱり本気だったらしい、というかそれ、私のためとかじゃなく明らかに私心だね。
人の底力ってすごいもので、最悪の事態が目の前でちらついてるといつも以上の実力を発揮するみたい。そのスパルタ指導に加えわかりやすい解説も施してくれるものだから、結果的に私は目標に何歩も近付けた気がした。こんなの何週間も続いたら、相当な学力向上になるに違いない。



『ありがとうトランクスくん。おかげで結構理解できた。自信もついたよ』

「うん、あれだけ俺の攻撃避けきるんだから、受からないわけない。名無し、もしかしてめちゃめちゃ頭いい?」

『はは…勉強は好きかな』

「じゃあバニーちゃんの衣装着る?」

『゙じゃあ゙って何!!なんでそーなる!!ごめんね、遠慮します』

「可愛いよ?名無しに似合うと思うんだ」



バニーちゃんて。あれだよね、テーマパークで風船配ってたりするあの着ぐるみのうさぎさんのことだよね?あんなの似合う似合わないあるのか。



『トランクスくんが着ればいいじゃない。可愛いと思うよ』

「……うげぇ。ねえちょっと、名無し…バニースーツ見たことあるの?」

『遊園地に行ったときに見たよ。風船もらった』

「……はあ。それちがうから」

『…うん?』

「うん…いいや。ご飯作ろうか」



トランクスくんは心底残念そうにため息を吐いて、会話を中断しさっさと部屋を出ていってしまった。いまいち話が噛み合わなくてめんどくさくなっちゃったのかな。

とりあえず昼食の準備をと、私も足早にリビングに向かい走った。キッチンをのぞくと、珍しく早めに仕事を切り上げたブルマさんがランチを作っていて、何となく癒される。ひどく疲れた私の心が、ね。

トランクスくんは追加でスープを作ると言うので、私はブルマさんのお手伝い。



「名無しちゃん、これ一緒に配膳してくれる?」

『はーい』



両手に食器を持って、二人でダイニングテーブルに向かう。キッチンを出るとき、落とすなよ、とからかってきたトランクスくんの顔を見てふと、先程のトランクスくんとのやりとりを思いだした。何となくだけど、お皿を並べながらブルマさんにこの話を切り出してみる。



「バニーちゃん?」

『はい。ウサギさんのことですよね?』

「ちょっと待ってね、名無しちゃん」

『?』



ひょいと本棚に手を伸ばして分厚い冊子を取り出すブルマさん。アルバムかな?パラパラ捲られていくページを見ると、案の定写真がびっしり入っていて、どれもこれも楽しそう。…昔冒険してたって聞いたことあるけど本当だったんだ。

ブルマさんはあるページのある1枚をピトッと指差し、アルバムを私に差し出してこう言った。



「じゃーんっ、バニースーツ〜」

『……え!!?』



なに、この如何わしいお店の衣装みたいな…えっトランクスくんこんなん私に着せようとしてたの!?
こ、こんな服…この娘みたいな美少女じゃなければ似合わない…っていうかこの娘。



『…もしかして、この美少女は』

「やだぁ、正直ね名無しちゃん。私よ」



髪の色とか、はっきりとした目鼻立ちとかスタイルとか。明らかに若かりし日のブルマさん。予想はしていたけど、まさかここまで魅力的だったとは。



『綺麗…』

「若かったからねえ」

『な、何言ってるんですか、ブルマさん今だってすごく素敵です!!今も昔も!!』

「あらそう?そうよね〜!!」

「……………何してんの」



配膳をほっぽってキャアキャアはしゃぐ私たちに、トランクスくんはスープを混ぜるのを中断してこちらに来た。私たちの後ろからアルバムを覗きこみ、何事?と問いかけてくる。私はトランクスくんに言いたい文句があったけどそれは後回し。あなたのお母さん、こんなに可愛いよ!!



「あら、トランクス。名無しちゃんにバニースーツ見せてるのよ」

『ブルマさんすごく似合うの!!』

「は?……母さん着たことあんの!?」



アルバムに集り騒ぐ集団は一層盛り上がる。トランクスくんは唖然とし、ブルマさんはそのときの冒険の解説を始め、私は写真に釘付け。ランチはほったらかしだ。

次にやってきたのはその状況に苛立ちを露にした表情のあの人だった。



「何を騒いでいる。飯は」

「それより父さん…これ」

「……なっなんだこれは…おい、ブルマ!!……お前こんな下品な格好…誰が着せやがったんだ!!」

「と、父さん落ち着いて」

『あ、そうだ。トランクスくん!!あなた、こんっな衣装着せようとしてたんだね!』

「あ、その気になってくれた?すんごく似合うと思うんだけど」

『ちょっと!!』

「やっぱりトランクスだったのね、通販でいろんな衣装買い漁ってたの。昨日いっぱい届いてたわよ」

「おいブルマ!!答えろ!!いったいこの格好」








ウサギさんのはなし



「カカロットか!!隣に写ってるのはカカロットだな!!あいつがこんな…げ、下品な…」

「父さんほんと…落ち着いて」




続.


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