海賊

□麒麟と豹は妄想で生きている
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深い深い眠りから目が覚めた名前。



未だに眠気がとれない頭で思い出したのは、隣には昨日までずっと居た彼が居る事。

窓から漏れ出す明るさで目がぼやけながらも彼の事を探るかのように隣へ動いた。





「…………?」





けれども、探った所で感触も温もりもない。あるのは不思議な感覚だった。居る場所にいない可笑しな感覚。


名前はそれがなんだか可笑しくてすぐさま目が覚めた。
身体をベッドから起こし確認する。





「……………カク……?」





カクがいない。



ただそれだけで恐怖に襲われた。


名前は直ぐにベッドから降りては裸足のままカクを探しに駆け巡った。



息を切らしても尚、CP9の長い廊下を駆け巡る。
誰も、誰もいない。






「……っハァ、ハァ…!」






【カク】…!





彼女は一人を探す。



けれど走っても走っても彼は見つからない。
幾つの部屋の扉を開けたか…そんなものは数えていられず次へ、次へ。



こみ上げてくる恐怖心の一人ぼっちの悲しさ。
涙目になりながら彼女は走り、









「ッ…カクっ…!!」





やっと見つけた。


椅子に腰を掛けながら本を読んでいた彼はそれに驚き目を丸くしては本を閉じ、名前を見る。


名前は涙目になりながら彼の場所へ走り出した。

そして彼の膝の上で泣く。

その時に芽生えたのは安心か、はたまた嬉しさか…。





「カク、カク…!」





「…どうしたんじゃ名前。主らしくもない……」





「どこにも行かないでっ…!私のそばにいて……」





「安心せい……儂はもう何処へも行かぬ……」





それはまるで子供をあやすかのような振る舞いだった。
泣きじゃくる彼女の頭を撫でて、彼自身は優しく微笑みかける。


柔らかく包まれたような空間。名前の泣く音と薪が火で割れる音だけカクの耳に聞こえてきた。





「カクがいないと…私っ……!」





おさまるかと思えば、涙は乾くことはなかった。
カクは困った。けれどもその反面嬉しくもあった。

何故なら彼女がたったそれだけの事で涙を流してくれていたから。


彼は頭に手を置いてあやす。優しい口調で彼女を。






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