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□偽りの言葉
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ドフ→→→←←鰐くらいの割合になっています。
久々のゲロ甘〜〜;



「お前と死ねるなら、それはきっとこの世で最高の生との別れだ」

いつだったか、そんな言葉を言われた事をふと思い出した。

くだらない。あまりにくだらない話ではある。
だが。

あの時おれは、なんと答えたのだろうか

今日は看守達がやけに騒がしい…




「なぁ鰐野郎、このおれがこれだけ誘ってやってるってのに一体テメェは何が不満なんだ?」

応接間に設置された来客用のソファに招いても居ない大男が行儀悪く座っている。
書類から視線を外さず返事も返さないまま葉巻の煙を吐き出すと空気を震わせるような男の笑い声だけが響いた。
あぁ、そういえばそろそろバナナワニのエサの時間だったな。

「なぁなぁ、健気だと思わねぇ?お前みてぇな奴を誘うために何度も足しげく通うのなんておれくらいだぜ?」
「…全くだな、いい加減諦めてくれりゃぁ良いんだが」

向けるのが言葉だけで相手を追い出す手段にでないのは、もう何度それを行っても相手が堪えることは全くなく、むしろ被害を受けるのはこの自室だけであるということを知っているからに他ならない。
そうでさえなければこんな男とうに追い出しているのだが、七武海の名はやはり名ばかりのものではなく、結局のところがこのろくでもない男を放置するのが最善の策であるからこそ、今日も男は此処に我がもの顔で居座っているのだ。

「フッフッフ!諦める訳がねぇだろう?何度だって言ってやるさ、なぁ鰐野郎、おれはお前を愛してるんだぜ?」
「実にくだらねぇ言葉だ」

ふわりと葉巻の煙が鼻孔を擽った。
なぁ、と一言吐いてデスクに座っていたおれの近距離まで顔を近づけた男は口元に安っぽい笑みを張り付けたままサングラスの奥に映る切れ長の目を細める。
サングラスで気付かれていないとでも思っているのだろうか。だとすれば、この男はやはり見たままの馬鹿だ。

「何を言やぁテメェは信じる?安っぽかろうが何だろうがおれにゃこれ以上の言葉はねぇぜ?」
「テメェの口から出た時点で真も偽だ。用が済んだならとっとと帰れ、おれはテメェに用はねぇよ」

ツレねぇのと軽口をたたきながらも男に出ていく気はないらしく元のソファへと落ち着いた。
どうせなら出て行ってくれれば良かったものをとも思うが自分ももうすっかりとこの男の居る部屋になれてしまって居る事には心底嫌気が差す。

「いい加減おれに惚れろよ鰐野郎。おれはお前が手に入るなら何を払ったっていい」

両腕を広げるとただでさえデカい男の身体はますます巨大に見える、ピンクの怪鳥が威嚇しているようでモノトーンで統一した部屋には何とも異様な光景だ。
だが男の方は大真面目でこちらの返事を待っている。

「…テメェはおれがそんなに安く見えるのか」
「見えねぇから困ってるのさ。フフッ愛しい愛しい女王様は気高すぎてな、テメェは何をしたら喜ぶんだ?」

相変わらず口元に浮かんだ笑みは胡散臭く張り付けられたままだったが、その声が真剣そのものだったので返す言葉に一瞬詰まってしまった。
変わりに視線を斜め上に逃がし紫煙をゆっくり時間をかけて吐き出した。こういう時に葉巻というものは便利だと思う。
逃げの手だとは分かっているが、馬鹿な男はそこまで気付いていないだろう。

「……テメェがさっさとくたばれば両手上げて喜んでやるよ」

ようやく返した言葉は普段の自分に近い答えで返せたと思う。
先程よりも距離が離れてしまった男の表情を読み取る事は困難だが、こちらの答えに疑問は抱かなかったらしい。

「フフフッ!なんなら心中でもするかァ?」

などとふざけた事を抜かすのでこちらも口端だけの笑みを返してやる。

「まっぴら御免だ。死ぬなら一人で死ね」
「ツレねぇなァ、おれは本気なんだケド?」
「テメェが本気なんて言葉を知っていたとは驚きだ」
「フフッ、言うねェ。だがよ、おれは思うわけだ」

ソファに凭れかかり夢でも見るかのように宙を眺めた後、男は吐き気がするほどの甘い声でその口に言の葉を乗せた。

「お前と死ねるなら、それはきっとこの世で最高の生との別れだ」

悪態をつくこともままならず一瞬の静寂に包まれる。そのまま男が視線を動かすのが分かりサングラス越しの瞳と視線が絡んだ。
何か言わなくては。
震える唇が動いて言葉を成していく。

「……お前、それ―――…」





外の騒がしさに思考は中断された。
頭がハッキリしてくると同時に埃の臭いやカビの臭いが急激に戻ってきて噎せ返りそうになる。

くだらない。

自分の居るところは薄暗い地下で、あの腹立たしい男の居る場所は外だ。
真新しいものの好きなあの男はきっと、また何か面白いものに夢中になっていることだろう。

だが、あの時。
おれは一体なんと答えたのだろう。

もう会う事も無いだろうが、自分が否定の言葉を吐いていなければ良いと思う。
正直な言葉など無いに等しい自分ではあるが、あの言葉にはせめて1割だけでも真実が込められていればと、そう思う。
もちろんあいつと心中してやるなんてまっぴら御免だ。
それでもあいつと生きているのは、そう悪くもなかったと言える。

勝手極まりない男が部屋に来て、何をするでもない時間を過ごす。そんな時が嫌いではなかった。…非常に迷惑ではあったが。

『白ひげのとこの2番隊長が』
『あぁ、今日投獄されてくるらしい』



囚人達の声が脳のどこか遠くで聞こえた。


もし、もう一度会える事があるなら…




共に死ぬより、共に生きる事を考えたい



fin
―――――――――――
途中で方向性を見失った結末。
物語のラストを考えるのが非常に苦手な寿莉であります。
ドフラが鰐好き過ぎたwww

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