短篇録
□風ノ旅ビト 遺跡
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一筋の星が吹雪に覆われた山々を越え、地底へと潜った。
冥闇の世界を迅り抜けた星は、再び地上に出ると、大いなる山を背に都の遺跡群を突き切り、広大な砂海を渡った。
行き着いた場所は小高い丘。
星は夜風に抱かれながら、丘の向こう側へ落ちていった。
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砂の上で目覚めたシェラは、赤いローブを身に纏っていた。
顔を覆う漆黒の仮面が、吹き荒れる砂埃から素肌を護る。
丘を登ると、斜面を下った先に幾つもの、数え切れないほどの墓標が立っていた。
このような荒れ地で死んでいった者達は、一体何のために生命を落としたのだろうか…。
シェラは仮面の両眼の部分にあしらわれた白い結晶石を通して、荒れた大地の最果てを見据えた。
靄がかった空に、輝く山の頂きがうっすらと浮かんでいる。
“有れを、目指せ”
何者かの声が、そう心の中で告げている。
(あの輝く山。あの山頂まで…)
丘を滑り降りたシェラは墓標の群れをすり抜け、輝く山の方角へ走った。