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□渡し忘れたラブレター
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あなたには大切な人、大好きな人、守りたい人はいますか?

それは恋人、友人、家族...形は様々であってもその人のことを思い、剣を振るうことであなたを強く逞しい人間にしてくれる、とよく言われます。

ですが守るべきものがあるからといって全てが剣術に優れた者ではありません。
私も守りたいものを守りたくても守れなくて死んでいった同士がいました。
ですが彼らは決して弱い侍ではなかった。
心は誰よりも広く、最後は誰よりも剣を我武者羅に振りました。

守るべきものがあるならば、日々努力を続けるべし。




遠い昔の思い出。
いつものように松陽先生がいて、銀時が部屋の隅で涎垂らして爆睡していて、晋助がポケーッとしていて、真面目に聞いてる小太郎。
私はその頃何してたっけ。
部屋のみんなの様子は瞼の裏に焼きついて離れないのに、自分は何をしてたんだろう。

それすら覚えていないんだ。忘れたことさえ忘れてしまっているんだ。

松陽先生からみた私はどんな女の子だったんだろうか。
先生の教えに背いていないだろうか。

先生、先生、先生、

私の初めての家族でした
初めて私の汚いと言われる手をその暖かくて優しい、広く大きな手で握ってくれました。
文字や剣術や志、先生に教えてもらったものは両手じゃ抱え込めないほどで。
それを忘れそうになるのを繋ぎ止めてくれるのは先生で、
そんな先生が大好きの三文字じゃ足りなくて。
抱き締めて欲しくて、頭を撫でて欲しくて、髪を結ってもらったときはみんなに自慢したんだよ。きっと先生は陰で笑ってたのかな。

先生、先生、先生、



私が守りたい人はあなただったのに。

先生、




渡し忘れたラブレター

私の初恋でした。


20120428
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