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□ニワカアメ
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真っ暗で灯りを点けてない部屋でふいに目が覚めた。
懐かしい夢を見た。
その頃はまだ今はもう触れることもできなくなってしまったサスケもいて、長く淡い桜色の髪を靡かせていたサクラ。顔をほとんど隠している、いつも気だるそうなカカシ先生。そして――――…



みんな笑っていた。
楽しそうに、幸せそうに。
いつから5人ばらばらになったのだろう。
別々の道を歩き出そうと背を向けて、もう何年も会っていない。
サスケが里を抜けたときから?いや、もっと前からな気がする。




「‥‥‥ンなこと、」




今じゃ、どうでもいい。
サスケが大蛇丸と行ってしまって、サクラが綱手様と。ナルトが‥‥‥、
もう考えるのは止めよう。
彼を思い出すと左胸が疼く。そして何故か涙が止まらない。苦しいくるしいクルシイ。そして何より、会いたい。

眩しいあの金髪と笑顔をまた見たくなってしまった。


自分の涙がこめかみを伝ってシーツに染みを作ったのがわかる。
そっと、無意識に爪をたてていたシーツを離して毛布を肩にかけてベッドを抜け窓を開けてみる。




「‥‥さっむ、」




2月と言えどまだ肌寒い。自分の吐く息は白く、そして静かに星が輝く黒い夜空に消えていく。




「見ろよ名前、
息が白いってばよ!」




見るものすべてが彼と結び付いてしまう。思い出したくないというのに。記憶が再び彼を呼び起こすのだ。

彼は今、何をしているのだろうか。この夜空を見ているのだろうか。そして自分ではない誰かと笑い合っているのだろうか。

私の記憶は机の上に気付けば倒されている写真立ての頃から止まったままだ。声も背丈も。
もう何年も経つというのに。自分だけが大人になっていく気がして。
寂しく、虚しいなんて久しぶりに感じた。


先日、大蛇丸に続いてうちはイタチの死とそれをしたのはかつての仲間のサスケだと、風の噂で聞いた。
これでサスケは里に戻ってくるかと思ったが、イタチが一族を抹消させたのは木の葉の所為だと聞いて今は生まれし故郷を潰そうとも思っているとか。
サクラに殺気を向けたとか。カカシ先生とも戦ったとか。

ナルトとも‥‥‥




「俺がぜってーサスケを体引き摺ってでも連れ戻す!!」




サスケが里を抜けた夜の次の日、病院で身体中に包帯やガーゼをつけた痛々しい姿のナルトは言った。
サスケはもう話を聞いちゃくれなくなっている。力をただひたすら求めて暗い闇へと歩いていっている。一緒に組み手をしたり談笑したりしていたのが嘘かのように思える。

私を除くカカシ班が揃っても笑顔ではないのは目に見えている。
ナルトがまたサスケを連れ戻そうと必死になっただろう。

嗚呼、そしてまた怪我をしただろうなんて。少し自嘲にも似た笑みが浮かんだ。
それと同時に先程止まったはずの涙が再び溢れていく。

何故かどこかで彼を待っている自分がいる。
いつしかいつかの笑顔で迎えに来るなんてあり得ないことなのに、頭では理解しているのに。


今、あなたはどこにいますか


すると背中にはいつかの懐かしい、ずっと探し求めていた彼のぬくもり。




ニワカアメ


「‥‥なる、と‥‥?」

「けっこー探したってばよ。心配かけるなよ、ばか名前」



ずっと待っていた、
夢の中じゃないあなたを。





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20120211

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