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□いがいとちがうみたいです。
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だんだん、だんだんと、今この二度と戻らない瞬間が次々と過ぎていくというのに、私はただ透明なガラスの外にある色素の薄い水色のだだっ広い空を頬杖をかいて、ただぼーっと眺めていた。

教室では紅先生の英語の授業の真っ最中で黒板には紅先生の綺麗な長い英文やカラフルな並線たちが並べられている。

一番斜め後ろの席からクラス中を見渡すと、シカマル、キバ、ナルトのサボりーズは当たり前のように机に顔を伏せて寝ている。私の真ん前の席のナルトは顔を机にくっつけてるだけだから、あほづら丸出しだ。口開けてヨダレ垂らしてるし。だらしないなー。サクラに嫌われちゃうぞ。とか思ってみたが当の本人、ナルトの隣の席のサクラは全く気にも止めず授業に集中している。

なんかつまんないなー‥‥‥。こんな小春日和は何も考えたくなくなる。昼食後となれば尚更だ。生憎、睡眠はカカシ先生の国語の授業で十二分摂ったし、窓の外は空に電柱に雀たちしかいない。時々楽しそうに親子並んで自宅へ帰る幼稚園児たちも、もう通りすぎないだろう。ひまだなー‥‥‥。




「お前が起きてるなんて珍しいな。どうした?」

「‥‥私だって四六時中寝てるわけじゃないよ。失礼な。」




15センチほど間のある席に座る、言わば左隣の席のうちはサスケが黒板から目を離しこちらを向いてきた。相変わらずイッケメンだな、ほろびろ。とか思いながらノートの上に頬杖をかきながら横目を向く。あんまりうちはと喋ってると熱くなって大声を出してしまうから気をつけなければ。




「うちはも真面目くんか」

「お前と違って英語は苦手だからな。」

「‥‥‥の割には91点とれてたじゃん」

「おま、なんで知ってんだよ」

「イタチさんが嬉しそうに言ってきたよ、よかったねー」

「またアイツか」


頭を抱えながら深い溜め息をを吐いた、うちはのお兄様イタチさんは私と同じ茶道部で、毎日和菓子が食べたいがゆえに入部したらしい。
甘いもの嫌いな弟がいるから家では満足に食べれない、って聞いてイタチさんの弟って優しくてほんわかしててもっとこう守りたくなるような草食系の男の子かと思ったけど、まさかまさか




「‥‥‥ハア」

「なんで俺見て溜め息吐くんだよ。」

「顔以外は可愛くない奴だと思って。」

「うっざ」




本当に宝の持ち腐れとはこのことだ。
顔はいい癖に無愛想で笑わなくて常日頃ムスッてしてて口開けたかと思ったら憎まれ口。

イタチさんはあんなに笑えば美人、笑わなくても美人。前後左右180度見回しても美人なのに。
いや、こいつもこいつで美人なのだが顔から<うざい>、<きもい>とか言われているような気がする。性格にやや、いやかなり問題があるからか。

こんなうちはを好き好き言う、サクラやいのたちの気が知れない。
ツンデレがいいの?こんなの7:3どころか9:1くらいでツンが圧勝だよ。デレなんかゴルフのホールインワンやボーリングのストライクより拝むの難しいだろう。毎日がバギー、ガーターの連続じゃねーのってサクラたちに教えてあげたい。




「おい、」

「誰が"おい"だよ、
私は千と千尋の神●しのおっさんの生首じゃない」

「‥‥‥名前、」

「おー、何だよ言ってみ」

「(急にえらそうになった…)」




呼んだくせに何も言わずに私の肘の下にある、まっさらなノートを左手で手早くとってすらすらと鉛筆を滑らせる。




「おらよ、」




手元に戻ってきたノートは閉じられていて、横目でうちはを見ると顔から耳が真っ赤だ。

訳がわからないまま、さっき開けてたページを開けてみたら、



いがいとちがうみたいです。




<今日、一緒に帰りたい>



ノートの右ページ端、
小さな小さなメッセージ。


イタチさん。
あなたの弟かわいいです




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20120204


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