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□お久しぶりですこんにちは
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「あれ、サスケだ。
里に帰ってきてたんだね。」



今日1日任務がなくて寝るのにも飽きて読書にも飽きて軽く修行をして汗をかいて自宅に帰ろうと歩いていたら、後ろから名前を呼ばれて振り返ってみたところ、見知らぬ女がいた。
長い髪をひとつに纏めて身長もサクラより少し高いくらいの。誰だっけこいつ。アカデミーかなんかで一緒だったのだろうか。思い出せない。
アカデミーの頃はよく名前も知らない女共が周りに群がっていて、女そのものには苦手の対象にしか入っていなかった。ましてや人付き合いも得意なわけでもなかったし余計に。



「あれ、私のこと覚えてない?アカデミーの頃はよく一緒に非常階段でお弁当食べたのに。」



ショックーとか言ってるがそんなにショックでもないらしい。半ば呆れ顔だ。少しは自信があったらしい。
…にしても、まさか目の前の女があの名前だとは思わなかった。昔はもっと髪も短かったし、身長は俺と同じ目線だったはず。まさかまさか。

あれはアカデミーの頃だった。
いつものように休み時間になる度に俺の席の周りに群がってどうでもいいことをベラベラと喋りに来る。不快以外の何物でもない。
昼食だけは1人静かに食べたいのでいつも逃げていたのは人気が少ない屋上へと繋がっている非常階段。そこに行けば必ずと言っていいほど現れる、クラスメートだったらしい苗字名前。特別仲が良かった訳でもないが自分と同じように両親を亡くし一人暮らしを小さい頃からしていたらしい。その割には寂しそうな顔を見せずにいつでも笑っていたコイツ。愚痴だって聞いたことあるし俺から八つ当たりだって何度かした。気付けば仲が良くなっていた。教室ではクラスメートで昼休みの間は話相手。初めて心を開けることができたのは名前だったのかもしれない。
そういえば、こんなこともあった。

―――――…‥
「あんた、私達から隠れてこそこそサスケくんと一緒にいるらしいじゃない!」

「こそこそ?隠れて?そのつもりはないけど。どうしたの、みんなして殺気だして。」

「惚けたって無駄なんだから!私見たの、あんたが昼休みになる度にサスケくんに近付いてるの!!
鬱陶しいからやめてよね!!サスケくんがかわいそうよ、ブス!!」



出るタイミングがわからなくて陰で聞くことしかできなかったが名前はなぜ自分が追い詰められているのかわからないらしい。首を傾げてクエスチョンを頭に浮かべて不思議そうな顔をしている。当たり前だ。コイツは他の女共と違って好意なんて持っていない。それに俺目的に非常階段に来ているわけではなく、非常階段から見える空や木々を見ているだけで言うほど親しいとも言えないだろう。どちらかが愚痴を溢したあとほぼ無言で弁当を頬張って俺は読書をして名前はスケッチブックを手にしたり手芸をしたり読書をしたり。お互い好きなように昼休みを過ごしていた。(弁当を作ってもらったりおかずをもらったりしていたのはややこしくなるので内緒だ)隠れてこそこそ会っているつもりも何もない。あいつらの目はおかしいのだろうか。鬱陶しいのは他の誰でもない俺から自由を半減させてくるあいつらだろう。関係ないが名前はそこまでブスではないだろう。女共よりはまだ比較的整った顔つきをしている。




「はっきり言いなさいよ!私達のサスケくんにちょっかいだしたって!」

「``私達の''サスケくん?
え、サスケって君らの家畜かなんかだったの?うっそんまじでかヒエー。」

「あんた、喧嘩売ってんの!?」




ぶはっ
不覚にも吹いてしまった。こんなところで天然っぷりを見せなくていいだろう…。まあ、確かに俺はあいつらのものになったつもりもなるつもりも更々ない。吐き気がする。だが家畜のほうがひどい。名前はいつそんな難しい言葉を覚えてきたんだ。なかなかチャクラの意味を覚えなかかったくせに。相変わらず変なやつだ。




「とりあえずサスケくんとはもう関わらないことね!!忠告しといてあげる。次見つけたらただじゃ置かないから。」


「…ちょっと待ってよ。


なんでそんなこといちいちあんたらに言われなきゃなんないの?こそこそ会っているつもりないしあんたらと違って私はサスケにそんな感情持ち合わせてない。サスケ本人に憧れてるのも尊敬もしてるのも認める。…けどそれ以上の感情はない。それにサスケはあんたらの``もの''なんかじゃない。易々とサスケを縛っちゃそれこそかわいそうでしょーが。
…あんたらに忠告しといてあげる。もし、今度あんたらが私の前でサスケを縛るような言い方したら、ただじゃ置かない、だっけ?」




衝撃的だった。普段はそんなに口数は多くなかったくせに長々と一気に言うもんだから唖然としてしまった。
その後、女共は何か怒って行ってしまった。
あんなに怒ることもあるのか。しかも自分以外のことで。珍しい。あの名前が俺に憧れ、尊敬していて俺のことで激怒するとか。
声をかけるにもかけづらい。それに何より嬉しい気持ちより恥ずかしい方が勝っていて。翌日、名前の顔を直視できなかった。



―――…‥
あれから5年。
アカデミーの卒業試験には合格したのは知っていたがその後、一切目にしていなかった。中忍試験にはいなかったので演習で落ちてしまったのだろう。
元々整った顔つきをしているのはわかっていたがまさかこんなに綺麗になるとは思わなかった。アカデミーの頃はもっと髪も短かったし俺と同じ目線だったのに今じゃ10cmほどの身長差。ドストライクとかそんなわけない。


「懐かしいねー。
いつか里抜けるとは思ってたからそんなに驚かなかったけど、まさか帰ってきてるとは思わなかった。」


俺だってそうだ。まさかこんなにも綺麗になって名前と再会するとは。もう二度と会わないと思っていたし、記憶からもほとんど消えている状態だった。


「聞いた話だと牢には入れられてないんだっけ。良かったんじゃない?」

「さあな。なんでも人手不足らしい。無償で高いランクの任務受けてる。監視つきで。」

「うっひゃー大変だねー。でもさ、戻って来たってことは目的は達成したんでしょ?」

「ああ。だが無理矢理連れ戻されただけだ。また抜けるかもしれない。」



イタチが愛した里だろうが関係ない。うちは一族を抹殺したのは他でもない木の葉。この里だ。いつかまた里を抜けるかもしれない。平和ボケしてしまう前に。呑気に生きる前に。大切なものなんて作ってしまう、その前に。俺にこの里は似合わないから。


「…とりあえず家おいでよ。もっと話を聞きたい。」

「は!?お前んちに行くのか!?」

「何寝ぼけたこと言ってんの?当たり前でしょーが。ウスラトンカチ」


誰がウスラトンカチだウスラトンカチ。サスケのために久しぶりに豪勢にしようかな、なんて以前よりますます綺麗な笑顔で言うもんだから断るにも断れず、名前の左手にある重そうな荷物を持って並んで歩いた。



「あ、そうだ。サスケ。



おかえりなさい。」


ふわりと笑ってみせたその顔はまだあの頃と同じ子供のようなあどけなさが残っていて、ひどく安心したのは秘密だ。




お久しぶりですこんにちは


かっこよくなったね、なんてさらりと言うから胸の動悸が急に早くなって顔に熱が集中してしまってお、お前もな!!なんて声裏返して吃りさらには顔真っ赤な俺、かっこ悪すぎだろ。




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