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□時の流れは待ってくれないの
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「景吾、来たよ」

今も尚、眠ったままの景吾



猫を庇って道路を飛び出し、トラックに撥ねられたあの日から

――――もう2年




話しかけても


手を握っても


頬に指を滑らせても




景吾の瞳は開かない


俺様な声も聞こえない


あたしをからかって笑ってくれない


今じゃ
みんなの中の"跡部景吾"が消えかかっている







ねえ、景吾




あなたは暗闇で何を見ているの









「それでね、景吾。ジローちゃんが『ありえないC〜!!』って。
本当にみんな子供だよねー」





勿論、景吾は返事をしない




そんなことわかっているけれど


あたしは何時、景吾が目を覚めてもいいように毎日来ている。



それに



あなたの『幼馴染』じゃなくて『恋人』になりたいって伝えたいから






あたしはあなたの分まで笑ってる、でもね景吾。


寂しいんだよ、景吾がいなきゃ


毎日が物足りないんだよ―――――





あなたの声も

性格も



全てが



あたしには刻み込まれているのに


なぜ、なぜ







時の流れは待ってくれないの


誰一人あなたを覚えていなくても
あたしだけが覚えてるって
今此処で眠る君に誓った


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