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□今晩、星降る夜は君と。
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「なぁ蔵、めっちゃ空、綺麗やで。」


《ほんまに?…あ、ほんまや

 星がきれいやな。》



  

  
あたしたちは中学生。


夜の9時に電話なんて親に知られたらきっとこの電話も
一瞬で親の手で絶たれてしまう


だからお互い、小さく囁くくらいの声音


あたしの左胸の音ほうがうるさいから
聞こえてたらどうしよう、なんて

鼓動も鳴り響く中で締め付けられている気がする


  



《クリスマス・・・さ》



「……、」




《一緒に神戸のルミナミエ、見に行かへん?》




「 ! 蔵…?急にどうしたん?」



《どうしたんって…一緒にふたりっきりで

ゆーっくりしてへんかったやろ?



…名前と一緒に行きたいねん》




「く、ら・・・。」 




  


ルミナミエは毎年、神戸で行われている
光のお城が幾つも並んでいてとても綺麗なところ

テレビでも度々、目に入る




「・・・でもそんな遠出やなくてもっ

蔵と一緒やったら・・・どこでも嬉しいで?」



《イヤ・・・か・・・?》




「ちがっ、」





  


「あたしも一緒に行きたい

でも、蔵の負担とか重荷になりたないねん・・・。」





喉の奥から痛みが伝わる


涙腺崩壊まで残り僅かだ





《相変わらずあほやなー、自分。》



電話越しの蔵は笑ってるように聞こえる











《いつ、俺が名前のこと重荷とか言うた?》



  


「言ってへんけど・・・。」



《なら、勝手に決めんな、アホ》




嗚呼、


どうして貴方は







「・・・、ひっく・・・うぇ、・・・」


《ちょ、何、泣いてんねん?!》








あたしが欲しい言葉をさらりと言ってしまうの






  


それからあたしは何度も蔵の名前を呼んだ


蔵もあたしの名前を呼んでくれる



その声が愛しい






本当なら今すぐ抱きしめて欲しい

唇を重ねて欲しい

お互いの指を絡めたい




その気持ちを消し去るように


数え切れないほど何度も蔵、蔵と呼んだ





  

  


《あ・・・。》


「どうしたん?」




《冬の夜空キレイやけど、秋もまた別格やなぁ》



「うん・・・。」







今晩、星降る夜は君と



君の居る未来だけを
僕は必要としている


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