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□心、雨降り。
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雨が続く毎日

もう2〜3週間したら桜が咲くというのに





雨はやまない








―――…ザァァァッッ





  

生徒会室の窓から外を眺める


空は濃い灰色に染まり、窓には水滴が引っ付いている




昨日も今日も雨。きっと明日も雨なのだろう



「おい。」

「あたしの親は"おい"なんていうふざけた名前付けてませんよー」



大きく溜め息を吐いた、コイツ
生徒会長、跡部さまさま





  

「…で?何か御用でも?」

「お前、関係者以外生徒会室は立ち入り禁止って言われなかったのか?」



言われましたよ
確かに言われました



「…で?」

「は?」

「言われてたら、何」




 

また溜め息を吐いた生徒会長
前髪を右手でかき上げて此方を青い目で上から見下ろしてくる


「部外者は帰れ」

「…りょーかい」


確かに此処からグラウンドを見るのは格別だが、
生徒会長に言われてしまっては仕方ない。


携帯とポーチ以外何も入っていない鞄を担いで
外していたネクタイをつけた

先ほどまで一人で遊んでいた家の鍵を机に置き忘れたのに気付かずに




   

  
水溜りを避けて歩く。
傘を差しても歩けば歩くほどスカートは濡れていく

車が来ないことを大いに祈りたい



ブーーン


祈っていたというのに来てしまった
漆黒の無駄に長いリムジンが


氷帝学園では普通の在り来たりの車だが
跡部財閥の紋章が。


心の中で舌打ちした




先ほどの説教の続きだろうか



大きなドアが開く音とともに覗かせる
長い足と金色の髪

  

「光栄に思え。俺様がわざわざ、直々に忘れもんを届けてやったんだからな」



あたしは彼がブレザーの胸ポケットから取り出したものを見て
目を大きく見開いた


受け取れという声とともに空中に跳んだあたしの忘れ物



「ありがとーございます」


軽く会釈した
あとが怖いので。


「……。」




  

跡部様は急に黙り込み青い目で此方を見下ろしていた




「何か?」


「気に入った。苗字、お前、俺様の秘書になれ」





「…は?」





唐突過ぎて頭が混乱して
彼が何を言いいたいのかサッパリわからない



「もう一度言う。俺様の秘書にしてやる」



「断固拒否」


「おい、コラ待ちやがれ!!」


    


背中を見せた途端腕を強く引っ張られ
目の前には彼の綺麗に整った顔がすぐ目の前にあった

息がかかるほど近い



「痛い。離して」

「お前がYesと言うまで離さねぇ」

「離して」

「秘書にしてほしいならな」

「嫌。離して」

「………。」

「はな、してよ」



近すぎてまともに顔が見れない


  


……というより展開が速すぎる気がする。
彼とは今日初めてまともに喋ったというのに、いきなり、そんな急に『秘書にしてやる』なんて


少女マンガみたいに『エェェェッ』なんて悲鳴が出そうだ
気持ち悪い。



「あれ?跡部やないか」


後ろを振り向くと図書館へ行ってたのだろうか
本を抱えた忍足君が不思議そうに此方を見ていた


 

助けてほしい
本当に帰りたい


だが彼とも関わりが無い
一方的にあたしが知っているだけだ
彼らは有名人なので。


「その子どないしてん」

「あぁ…。いい秘書が見つかってな」


「めっちゃ嫌そうな顔してるで」




うん、本当に帰りたい助けて



   

「ッチ。明日からお前がYesと言うまで付きまとってやる」

「「…は?」」


「登下校、食事中、休み時間、日常茶飯事一緒にいてやる



覚悟しとけよ?」





また大きな車に乗り込み嵐のように去っていった



「お嬢ちゃんかわいそうにな。ま、がんばりぃや」




肩にぽんっと手を置かれ忍足君は元来た道へ戻っていった










気付けば雨はやんでいて、綺麗な7色の虹が出ていた


虹が出てもあたしの心は未だに灰色で暫く青空は見えそうに無い






心、雨降り。

あれ、見上げた空は
彼の瞳の色してる

  

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