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□想い  儚く降り溜まる
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もし、あたしがあの人とおなじ立場なら

あなたはあたしをみてくれた?














今日、昼ごろから予想もしなかった突然の雨。
すぐ止むと思っていたのに放課後になっても中々やんではくれない

友達はみんな持って来ていて、
彼氏や想いを寄せている男子と相合傘らしい

傘も持って来ていないし、別に家で何かしたいわけでもないので
校舎をぶらぶらと歩くしかなかった

そしたら秘かに想いを寄せている、
テニス部部長白石先輩の声が聞こえた。


「…から…や…ねんって」




何を言っているのか聞き取れなかったので
少しの距離は保ったまま近づき、身を隠しながら白石先輩を見た


「あ、―――」


――――名無しさん先輩



白石先輩と幼馴染で確か忍足先輩の彼女とか聞いたことある




「なぁ、どうしたらいい…?もういやや…」


泣いてる
名無しさん先輩が

震えた右手で白石先輩の袖を掴んでいた



「ケンヤもなんかあってんて…考えすぎや」

「でもっ一緒に手、繋いでてんで?もう…信じれへんやん」




  


浮気現場を目撃したんだろうか
それを白石先輩に相談しているのはわかる





―――でも、なんで白石先輩に相談するの?
別に他の女友達とかでもいいじゃない
他のテニス部員でもよかったじゃない


白石先輩も忍足先輩も放したくないっていうの?
そんなの名無しさん先輩はわがまますぎる。

忍足先輩も名無しさん先輩が悩んでいるのとおなじくらい悩んでるかもしれないし
第一、白石先輩とふたりっきりってことから既に『ウワキ』になるんじゃないの?



  


・・・・あ。
今、ものすごく馬鹿なこと考えてしまった

こんなんだから、白石先輩も見てくれないんだよ



「ごめ、蔵・・・あたし、もう・・・」



でもやっぱり
名無しさん先輩がうらやましい

ふたりっきりが許されるあなたが
心配してもらうあなたが
白石先輩の前で涙を流せるあなたが
先輩の『幼馴染』のあなたが

あなたの存在が全てがうらやましい




それに







「じゃあさ…






ケンヤなんかやめて俺にしーひん?」




その言葉を白石先輩からもらえるあなたが
羨ましくてたまらないよ





想い 儚く降り溜まる





雨は涙と共に

地面の上に虚しく落下するのだ



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