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□夕焼け赤色、頬は桃色
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通学路の坂から見える、夕焼け眩しい部活後の帰りが
いつも一日の終わりを告げているように感じられて
この瞬間『今日も一日頑張ったぞ』って気持ちになる。


今、その気分に浸っているところだった。

小さい体。白いキャップ。
青学のテニス部のレギュラージャージにラケットバッグ。
多分間違いない。


「・・・越前くん?だっけ?」

「俺のこと知ってるの?」


帽子で少し隠れた大きな目があたしを見上げる。
 

「よく英二から話は聞いてるよ。


『入部早々上級生に目つけられて古いガット緩いラケットでも圧勝して。
サウスポーなのに右手でやって。更には生意気な口調で挑発した、面白い後輩』って。


いい性格してるね、越前くん。」



幼馴染の英二からの彼の話は聞いている。
まさか、こんなにも早く“王子様”に会えるなんてね。

話に聞いた通りのテニス以外興味を示さないらしい。

あたしと身長差は10cmくらいかな。
きっと本人は気にしてるだろうから口には出せないけど。
でも、可愛いなー。“王子様”っていう異名も頷ける。




完全なる嘘なのに
その授業のあと、誰もいない生徒指導室に呼び出されて
先生に


「俺は・・・、そこまで大層な人間じゃない・・・
だが、お前の気持ちは嬉しい。有難く受け取っとくな。
ありがとう。」


と照れながら恥ずかしそうに頬を染めて言われた。
あの出来事は一生で1番の恥だ。

あれから、その先生はあたしが体調不良で休んだりする度に電話をくれたり
ほかの先生から注意されてるときに庇ってくれたり
怪我したら心配してくれたり、世間話をしたり、
給食当番とか日直とか手伝ってくれたり。

とりあえず贔屓してくれるんだけど、
それを英二の耳に入ってテニス部に口を滑らしてしまった。

  


手塚に

「いい先生を味方について頂いて安心だな」

と真顔で言われて、思わず体が硬直したのは今でも忘れられない。

・・・まぁ、とりあえずテニス部の皆さんには
『咄嗟についた嘘で先生を味方に回す小悪魔』的なイメージがあるかもしれない。

目の前の2つ下の後輩も例外ではないかもしれない。



 
  
「越前くん
・・・もしかして英二からあたしの変な話聞いてたりする?」

「もち。」



即答だった。
もう肩の力が抜けるのがわかる。


英二のバカー!覚えとけよー!




「・・・・俺が聞いた話だと『鈍い人』ってイメージだったけど



・・・なーんだ、想像と全然違うじゃん。」


 

  
「えーっと・・・?ソレ、どういうこと?」



「ん?普通に『可愛い女の子』じゃん。



俺は好きだけど?
先輩みたいなマイペースなのに頭のキレる女の子って。」



頭のキレる・・・?
あたしが?

しかも軽く『好き』って言われたし。




「・・・あたしのどこが頭のキレる女の子なの」


「咄嗟で口からでた嘘が『ファンレターです』って。
怒られずに済んだし、先生を味方につけるって、一石二乗じゃん。
直感ででた考えっていうのがまた凄いよね

顔もそこそこ可愛いし、本気になりそう。



なーんてね。」




 あ、ヤバい。頭がクラッてしそう。
本当に目の前の彼は“王子様”だ。
キュンってする台詞を軽く言ってしまうのだから。


彼の冗談のがあたしには効果ありすぎる気がする。
只今、あたしが騙した先生と同じ状態。
・・・かな





夕 焼 け 赤 色 、 頬 は 桃 色





「英二、越前くんってカッコいいね」

(((おチビ、もう手を打ったの!?早すぎだにゃー・・・流石オチビ・・・)))



2011/6/26
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