短短編。

□元・拍手お礼小説
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『そばに居たい。』



目を覚ますと、ソファに横になっていた。


……いつの間に寝てしまっていたんだろう。


さっきまで、読書をしているニールの隣に座っていたはずなのに…。


まぶたを指でこすりながら、上半身を起こす。


その時になってようやく、身体にかけられた毛布に気づいた。


…ニールがかけてくれたのかもしれない。


辺りを見回したけれど、ニールの姿は見えなかった。


………どこに行ったんだろう。


…寝てしまった僕に呆れて、何処かに行ってしまったんだろうか?


もしかしたら眠っている間に、何か読書の邪魔になるようなことをしてしまったのかもしれない…。


そんな考えが頭を巡り、不安が胸の内に広がっていく。


とても心細かった。


寝ている間には、幸せな夢を見れていた気がするのに。


……それはきっと、ニールのそばに居ることで安心できたから。


でもニールがいないと…こんなにも寂しい気持ちになる。


―――僕はいつの間に、孤独に弱くなってしまったのだろう…。


唐突にそんな言葉が浮かんだ時、


部屋のドアが開く音がした。



「……お。やっと起きたな、ティエリア」


「………ニール…」


いつもと変わらないニールの優しげな表情を見て、ほっと胸を撫で下ろす。


「今ちょうどコーヒー淹れてきた所なんだけど、お前も飲むか?」


「…の、飲みます。」


なんだ…、コーヒーを淹れに行っていただけだったのか……。


自分の考えが全て杞憂だったことが分かり、何だか脱力してしまう。


「どうした?疲れた顔したりして」


ニールが僕の隣に座り、優しい声で気づかってくれた。


「……………。」


…そこでふと、ニールに質問してみようと思った。


彼なら、きっと教えてくれるような気がして。


「……あの。ニール…」


「ん?」


「孤独が怖く感じるのは、…何故なんでしょうか……」


「急にどうしたんだよ」


僕の質問にニールはちょっと笑った。


でもすぐに僕をまっすぐ見つめ、返事をしてくれた。


「…『安心』を知ってしまっているからなんじゃないか?」


「………。」


「そういえば昔のお前は、『孤独』を知らないかわりに『安心』も知らなかったよな」


「……。……かもしれません」


そんなもの、必要ないと思っていたから。


…でも今は違う。


それがどれだけ尊いかを、知っている。


だから、


どれだけ孤独を味わってもいいから、……僕は貴方のそばに居たい。


ニールの隣で、素直にそう思うことができた。






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