短短編。

□Bond of affection
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『夢』






ヴェーダの中を漂いながら。



―――僕は夢を見た。






それは、あの人の夢。



優しくて暖かい…思い出すと少し切なくなる、大好きなあの人。


夢の中のあの人は、僕を見つめて柔らかく微笑んでいた。



―――光があふれ、沢山の花が咲き誇る暖かな場所に僕たちはいた。


もしかしたら、天国とはこういう所のことを言うのかもしれない。



そんな場所で、僕はあの人と2人きりだった。


ずっと会いたくて、けれど会えなかったあの人。



話したいことが沢山あった。


伝えたいことが沢山あった。


そのはずなのに、


何も言葉が出て来ない。



『ありがとう』って、言いたい…


『ごめんなさい』って、言いたいのに。


言葉の代わりに涙があふれて。


止まらなかった。



……ごめんなさい。


本当にごめんなさい。


僕はどうしていつもいつも、


貴方に何もしてあげられないんだろう。


貴方は僕に大切なものを沢山くれたのに。


僕は貴方を傷つけることしか出来なかった。


貴方は僕の命を助けてくれたけれど、


貴方が傷つくくらいなら、僕は…


…僕は、消えてしまいたかった………












「気にするなよ。


お前は俺がいなくなってからも、ずっと頑張ってきたじゃねぇか。


そのことでもう、俺は報われてた。


お前を助けられたことが、俺の生きた証になった。


…ありがとうな」













目が覚めた時。


あの人の姿は当然、どこにもなくて。


僕の頬にはいくつも涙の跡が残っていた。


よく見ると片側の頬に、誰かが涙をぬぐった跡があった。


―――そこから、かすかに花の香りがした。







おわり。





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