BL

□グラビティ。
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早朝。




「……ニールっ!」



朝食を摂りに向かう途中、突然背後から呼び止められた。

よく聞き慣れた声音、しかも本名呼び。

……声の主は間違いなくティエリアだろう。

朝からティエリアに会えるとはラッキーだぜー俺得俺得、とか思いながら俺は振り向く。

と、

突如、すごい勢いでやって来た何かに、思い切り抱き着かれた。



「うわっ!?」



予想外の事態にびっくりしたが、現在進行形で俺にしがみついている何かの正体に気づき、すぐに安堵する。

同時に、いつもと違う状況に疑問符が浮かぶ。



「…どーしたティエリア?いきなり抱きついてきたりして」


「……その。昨晩、怖い夢を見て……。それで、つい…」



そう言って、恥ずかしそうに頬を赤く染めるティエリア。

それから真っ赤になった顔を隠すように、ますます俺にぎゅっとしがみつく。

……何だこいつ、可愛い。

いつもはツンケンしてるくせに時々こうやって甘えてくるから、そのギャップが可愛くてたまらない。



「よしよし…。大丈夫だから。な?」



ティエリアの頭を優しく撫でてやる。

すると、ティエリアの「ん…」という気持ち良さそうな声が聞こえた。

……頭撫でられるの好きだよなー、こいつ。

俺は頭を撫でるのが好きだから、相性ばっちりだな。

と、いう訳で、この際だからティエリアの頭をいっぱい撫でてやることにした。

無重力でふわふわ漂う髪を撫でつけるように、頭を撫でてやる。

……ん?

あれ?

ふわふわ漂ってる、っつーか……、

風になびく勢いで、ティエリアのサラサラ髪が舞ってる気が……



「って、なんか俺達、ぐるぐる回転してないか!?」



考えてみりゃ、ここは宇宙航行中のトレミーの内部だ。

食堂等の例外を除けば当然、無重力空間。

けっこうな勢いで抱きつかれたから、その反動で2人一緒に回転しちゃってんのか…。

フィギュアスケートのスピンみてぇ。

……って、そんなに速い回転ではないけれど。

マイスターとしてある程度の訓練は受けているから、酔いもしないし。

このままティエリアとぐるぐる回るのも割と楽しいかもな………



「……いや、このままじゃ壁にぶつかっちまうって!!」



思わず自分にツッコミを入れてしまった。

周りの景色が回転しているから壁の位置がどこなのかイマイチ分からないが、通路はそんなに広くはないから、いつか絶対にぶつかるはずだ。

俺ならまだいいが、ティエリアが壁と激突……なんて可哀相すぎる。



「ちょ、ティエリア、俺から離れろっ。そしたら回転も止まるかもしれ、」


「嫌です!!!」



キッパリと言うティエリアさん。

絶対に離れるものかと言いたげに、更に俺にしがみついてきた。





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