BL

□保健室の冬。
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まえおき。

ロックオン(ニール)先生は保健室の先生なんだぜ!!





とある日の午後。





「眠り姫に質問だが……。冬と言えば、何だと思う?」


「………は?」



同僚であるグラハム・エーカーからの突然の質問に、俺は戸惑いを隠せなかった。

…ここは俺の職場、つまりは保健室。

俺は事務机の上で事務作業。

グラハムは長椅子の上でガンプラ作りの最中だった。

この時点でかなりの量のツッコミ所を思い付けるが、無駄な体力を使いたくなかったので無視した。

ただでさえ仕事が山積みなのに、これ以上の労働は御免だぜ。

……しかしグラハムの台詞自体を無視すると後々大変なことになるのは既に経験済みなので、返事くらいはしておくことにする。



「冬と言えば…やっぱ鍋とか炬燵とか、雪とか。そんなもんじゃね?」


「フッ、甘いな眠り姫。君にはその程度の発想力しかないのかね?」


「…んだとぉ?じゃあ、あんたは何を思い付けるっつーんだよ。」


「ふふん。聞きたいか?」


「………。」



正直どうでもいい。

どちらかと言えば聞きたくない。

コイツのことだから、どうせ変態的な台詞しか言わないんだろうし。

………ていうかグラハムのどや顔殴りてぇ。



「随分と聞きたそうな顔をしているな、眠り姫。では教えるとしよう…」


「んな顔してねーよ。お前を殴りてぇなーって顔してたよ。」


「冬と言えば何か……それすなわち、『保健室』だ」


「…は、い??」



何がどうなったらそんな珍妙な答えに辿り着くんだか。

訳が分からず、俺は首を傾げる。

そんな会話の中でも、俺はパソコン上で仕事をこなす手を止めない。

ぶっちゃけ締め切りがヤバい。

ちらりとグラハムの方を見ると、奴も俺の方を見向きもせずにガンプラを製作していた。

その様子に特に何の感想も抱かず、俺は視線をパソコン画面に戻す。



「…俺はここにいて冬をイメージしたことなんざ、ただの1度もないぞ?」


「だから発想力が乏しいと言うんだ。いいかね眠り姫、保健室とは、何をする為の場所だ?」


「って言われてもよ…。怪我の処置とか、体調不良の生徒をベッドで休ませるとか、身体測定とか、ここでやることなら沢山あるだろ?」


「確かにそうだ。しかし…しかし、だ。
冬における保健室は、一体どのような状況になると思う?…他の季節とは明らかに異なるシチュエーションになるだろう?」


「……うーん…?」



………。

…え、ていうか何こいつ?

何で偉そうに俺を質問攻めにしてくれちゃってんの?

ウザい。ウザいんですけど。

マジですげーウザくなってきた。

やっぱり殴っちまおうかなぁ……。

や。落ち着け俺。

ここで同僚を殴ったりしたら下手すりゃ懲戒免職………



「冬における保健室………想像してみたまえ。
…部屋全体は加湿器の熱気で蒸し暑く、やってきた人間はといえば風邪気味で身体が熱くなっており、息も乱れて意識が混濁している。
しかしそんな中、目の前には雪のように白い肌と涼しげな瞳を持った白衣の美青年、もとい君がいるのだぞ。しかも保健室には当然ベッドというものが存在し、」


がすッッ
(注:ロックオンがグラハムを殴る音)



直後、「ぐふっ!!」とか言いながら、どさーっと床に倒れ込むグラハム。

その背中を容赦なく踏み付けながら、俺はにっこりして言う。



「……正当防衛なら懲戒免職にならないよな!!」





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