BL

□シークレット
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トレミーのとある一室にて。





「……最近ライルとマトモに会話してねーんだよな」



缶ビールをほんの1口煽りながら、俺は独り言のように呟いた。

普段は他人に愚痴を言うたちじゃないし、特に酔っている訳でもなかったが。

むしろ酒には強い方で、滅多に酔っ払ったりはしない。

それでも今は、酒を片手に本音をこぼしたい気分だった。

それだけ自分が鬱々とした気分になっている証拠だろう。



「なに?ケンカでもしたのぉ?」



隣で俺の3倍は飲んでいるミス・スメラギが、酒をグラスに目一杯注ぎながら聞いてきた。

この人は一体どれだけ飲むつもりなんだか…。



「別に…。ただ、仕事の関係でなかなか会えないんでギクシャクしてるっつーか…。
会ってもなんか無視されるし……」


「ライルも忙しいんでしょ〜?あなたに構っていられるほど心に余裕が無いのよ、きっと」


「………」



俺がライルだったら、そんな風には思わない。

忙しくて心に余裕が無い時ほど、傍にいて癒してほしいと思う。

大体、最近のライルの俺に対する態度は素っ気なさすぎるんだ。

……まあ元々、素直に甘えてくれるような奴でもなかったけれど。



「今日だって、あいつ久々の休みだったくせに俺と会ってくれねーしよ……」


「そんなに言うならあなたの方から会いに行けばいいじゃない?」



サラっとそんなことを言うミス・スメラギ。

俺は思わずため息をつく。



「簡単に言ってくれるぜ…。それが出来るんならこんなとこで飲んだりしてないって」


「あら?意外に小心者なのねぇ」



酔っていて少々気分がハイになっているらしいミス・スメラギは、にやにや笑うのを隠そうともしない。

そして彼女は何を思ったか、片手で持てる程度の大きさの酒瓶を、突然俺に手渡した。



「さぁ、これでも持って行ってらっしゃい。酒の力は万能なのよ!!」



どや顔で言うミス・スメラギ。

元気だなーこの人…。

俺は持たされた酒瓶に視線をやり、それからもう1度ため息をつく。

……まあ、ここでうだうだしてても無意味なだけだしな。



仕方なく俺はライルの部屋へと向かうことにした。





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