BL

□優しい夢
1ページ/2ページ






好きな人の部屋で。

好きな人のすぐ傍で、僕は目が覚めた。

…いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

瞼を開くとベッドの端に腰掛けて僕の頭を撫でるニールが、視界に入った。



「……何をしているのですか?」


「んー?頭撫でてやってんの」


「誰がいつそんなことを頼みました?」


「随分な言い草だな…。お前さんの寝顔が甘えたそうにしてたから、撫でてやってたのに」


「……。」



はぁ、と僕は大きなため息をつく。

呆れて何も言う気にならない。

けれど、意思に反して僕の頬が僅かに紅潮してゆくのを、否応なしに感じた。

…身体はやけに正直だ。

頭を撫でられているだけでこんな風になってしまう。

撫でる手つきが狡いくらいに優しくて、温かいから。



「……寝てる間、何の夢見てた?」


「…え?」


「ちょっと気になってたんだよな。ティエリアが普段、どんな夢を見てんのか」


「………別に…。…というか、忘れました」


「何だそれ。つまんねぇー」


「夢なんてそんなものでしょう。どうせすぐに記憶から消えてしまうんですよ。
だって所詮、夢だから」


「…そんなことねぇよ。夢にだって色々意味はあるんだぜ?」


「あいにく下らない夢占いの類いには興味はないんです」


「そんな話はしてねぇっつーの。
ん〜…そうだな、じゃあ例えばさ…、」



そう言ってニールは腕を組み、何かを考え込むような素振りを見せた。

頭を撫でる優しい感触がなくなり、それが少しだけ寂しかった。

僕がじっと待っていると、やがてニールは再び口を開いて話し始めた。



「例えば、俺がいなくなったとする。」


「………はい?」



あまりに唐突な彼の発言に、僕は瞼をしばたたかせた。

そんな僕を見てくすりと小さく笑いながら、ニールは言葉を続ける。



「いなくなるなんて表現は曖昧すぎるから、俺が死んだってことにしておこう」


「……随分と直接的な表現ですね」


「きっとお前は悲しむんだろうな。……泣いたりもしてくれんのかねぇ」


「………」






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ