BL

□貴方の手が不安を消してくれたとは絶対に言わない。
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いつものようにニールの部屋で小説を読んでいたら、急に目が痒くなった。

反射的に、手でごしごしとこする。

すると、すぐ側でハロの手入れを行っていたニールが見咎めてきた。



「こらティエリア、目をこすっちゃ駄目だろう。」


「目などこすっていません。下瞼を、」


「屁理屈言いなさんな。どうした、目が痒いのか?」



たしなめながらも、ニールは心配そうに僕を見る。

さっきまで読んでいた小説に出てくる、『お父さんキャラ』みたいだった。



「少し痒い…。」


「ばい菌か何か入ったか?」


「失礼な。僕は目には人1倍気を遣っているんですよ?」



ちょっと威張ってみた。

イノベイドにとって、ヴェーダへアクセスする為の目はとても大事なのだ。

その目を守る為に、僕は普段からあらゆる努力を行っている。

しかし、ニールはそんな僕に対して、褒めるならまだしも呆れたようなため息をついた。



「それなら目ぇこすったりすんなよな…。
どれ、ちょっとお兄さんに見せてみなさい」


「む………。」



ニールの手が僕の頬へ添えられ、顔をゆっくりと引き寄せた。

それから、瞳をまじまじと見つめられる。

至近距離なので、額に彼の温かい息がかかる。



「……………」



ニールの透き通った碧色の瞳と視線が合わさったまま、身動きすることも出来ない。

……自然と胸がどきどきし始めた。



「…ん、まつ毛が1本入っちまってるな」



やがてニールは、サラっとそんなことを言った。

直後、僕はその言葉に固まる。

……まつ毛?

睫毛?

ma・tu・ge?

まつげ……?

が、

目に入り込んでいる……だと…!!?

えええええええええええ。


予想外の事態にめちゃくちゃ動揺したが、カッコ悪い所は見られたくなかったので、表面上はなんとか平静を装う。



「………な、なるほど…。まつ毛が……」


「お前さんみたいに大きくてくりくりな目してると、まつ毛も入りやすそーだよなぁ」


「い、いえ…、ま、まつ毛が目に入ったのは今日が初めてです………っ」



無意識の内に声が震えていた。

おおお落ち着け僕。





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