BL

□とある休日
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真夏日。




ヨーロッパのとある国。

…の、とあるマンション。



久しぶりの休暇は、普段隠れ家にしている場所で過ごすことにした。

…と言っても、ここは俺の隠れ家ではない。



「………」



俺に背を向け、少し離れた位置にある机で熱心にノートパソコンをいじっている少年…ティエリア・アーデの隠れ家だった。

ここに来てから既に1時間ほど経っていたが、その間ずっと俺はソファーに座って読書をし、ティエリアはパソコンを操作していた。



「………」



…正直、暇だ。

……ていうか、何をしていいか分からない。

室内の沈黙が痛い。気まずい。

なんか胃がむかむかする。

…あれ、もしかして俺、緊張してんのか?

ここがティエリアの家だから?

えー……。

いたたまれなくなり、何気なくティエリアへと視線を移す。

ティエリアの姿は、俺の居る所からよく見える。

……ん?

ティエリアは真夏だというのにカーディガン(今日は水色)を羽織っている。

しかも時折、身体をさすっている。

…何か寒そうだった。

室内はクーラーの温度で良い感じに冷えている。

その温度設定をしたのは、部屋の持ち主であるティエリア本人だ。

その本人が、何であんなに寒そうにしてんだ…?



「……なぁティエリア、」



俺はソファーから立ち上がり、壁に備え付けられたクーラーのリモコンに手を伸ばす。



「何でしょうか?」


「クーラーの温度、上げてもいいか?」


なッ、
寒いのですか!?そんな馬鹿な、ニールが最も過ごしやすい室温は事前に調、」


「やっぱりか!!あーもう何やってんだよお前さんはっ。」



思わずティエリアの頭に後ろから、ずびしッと手刀を振り下ろしてツッコんだ。

その拍子に前のめりになったティエリアが、「痛っ」と声を漏らす。



「…ったく、勝手に気を遣ってんじゃねーよ、寒がりのくせに。風邪引いたらどうすんだ?」



リモコンを操作して温度を3度ほど上昇させつつ、怒ったように俺は言う。

……まあ実は、ようやく会話のきっかけが出来て感謝してたりするんだが。



「き、今日の貴方は客人ですから、失礼のないようにと思って……」


「……とか言いつつ客人の過ごしやすい温度を事前に調べる際、既に失礼のあることしてたんじゃねーのかぁ?」


「してませんっ。ほんの少しストーカー行為を働いただけですっ!」


「お前さんの中の倫理観は一体どーなってんだ!?」



ティエリアは俺の方を振り向いて喋っていたので、今度はデコピンをお見舞いしてやった。

反動でのけぞるティエリア。

身体柔らかいなーコイツ。



「いっ…、痛いことしないで下さいっ(泣)」


「…あのなぁ、そういう風に涙目で訴えれば何でも許されるって訳じゃねーんだぞ?」



そう言いつつも、半泣きで額を撫でさするティエリアに軽く篭絡されそうになった…

……というのは勿論内緒である。



「つーか本当に客人に失礼のないようにしたいんなら、まずそのパソコンをやめろっ!」



机の上のノートパソコンを指差し、俺は言った。

そのパソコンのせいで話しかけにくかったってのもあるしな。

よし、諸悪の根源はこのパソコンっつーことにしておこう。

この俺が恋人の家に来て緊張してたとかそんな事実は最初から無かったんだ、うん。







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