BL
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一卵性の双子だからといって、何もかもが似ているという訳じゃない。
確かにDNAは全く同一のものだけれど、例えば指紋なんかは丸っきり違う。別物だ。
環境が違えば性格だって、時には容姿さえも違ってくるだろう。
嗜好も、口調も、いつまでも同一でいられるはずがない。
双子の共通点は、本人達も知らないうちに段々と減っていく。
………が、
いくらなんでも、俺と兄さんは共通点がなさすぎる気がする。
これも所詮は俺の勝手な主観なんだろうか。
「どうしたんだよライル、浮かない顔して。せっかく兄弟水入らずで2人っきりになれたってのに」
考えごとをしていたら、兄さんが俺に話しかけてきた。
いつも通りの軽いノリ。
女の子に話しかける時の俺並に軽い。
「………考えられる原因は3つだな」
「お?何だよ。言ってみ?」
「1、せっかくの休日に兄さんと過ごす羽目になったこと」
「うん」
「…2、宿泊先のホテルの部屋が何故か兄さんと同じだってこと」
「ふむ」
「……3、その部屋で今現在兄さんと2人きりだってこと」
=今俺が置かれている現状である。
久しぶりの連休、1人で旅行でも、と思ったのに…。
何が悲しくて兄さんと過ごさなきゃならないんだ……。
けれど、俺の恨みがましい言葉も視線も、兄さんは涼しい顔で受け流す。
「そんなに嫌がることでもねぇだろ〜?
最近は互いに仕事続きで、こうして会話することすら久しぶりなんだからよ」
「……まぁ、そーだけどな…」
「逆に聞くが、何がそんなに嫌なんだよ」
「……………。」
「…もしかして。
適当に街でナンパした女の子と過ごしたかったーとか、そんなことでも考えてたか?」
兄さんが『図星だろ?』と言わんばかりのにやにや顔で聞いてきた。
ムカつく……。こっちの気も知らないで。
「違ぇよっ。俺は単純に観光に来ただけだっつーの!」
「どっちにしろ1人で観光なんざ寂しいだろ。ここら辺なら前に来たことあるから、俺が案内してやるよ」
「ガイド雇うから必要ねぇよっ」
「つれねぇなぁ〜〜…」
残念そうに言う兄さんを無視し、俺はベッドの上にぼふっと突っ伏した。
飛行機で5時間過ごし、今さっきホテルに着いたばかりだったので、さすがに体が疲れていた。
軽い時差ぼけもあって、まだ夕方の7時だというのに睡魔が襲う。
……どっちにしろ、観光行く気も萎えたし。
今日は焦らずホテルでのんびり過ごそうか。
「……兄さん。9時になったら起こしてくれ。それまで寝る……」
「…って、晩飯はどーすんだよ」
「起きた後にルームサービスでも取るわ」
「………。マジで寝んのか?兄さんを一人ぼっちにして?」
「知らねぇよ……」
――ていうか、俺としてはなるべく兄さんを視界に入れない為にも寝たい訳で。
まぁ、この状況で本当に自分が寝られるかどうか怪しいもんだが。
兄さんと居ると無駄に動悸がして戴けない。
「………」
俺はそっと瞼を閉じる。
瞬間、視界が黒に覆われた。
その分聴覚がいくらか過敏になり、2人分の息遣いとエアコンの音がやたら大きく感じる。
………とっとと寝よう。
色んな現実を頭から追い出して。
もちろん、
俺が今、兄さんのせいで必要以上に緊張していることも、忘れて。
……そんな風に必死に思考を空っぽにしていたら、次第に意識が眠りの中へと落ちていくのを感じた。
………………。
、