BL
□甘いのなんて大嫌い
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バレンタインデー当日。
『女子が好きな男子にチョコレートを渡す日』という縛りは関係なく、トレミークルー達は友チョコ的なノリでチョコの受け渡しをしていた。
「はい、スメラギさん。手作りチョコ作ってみました」
フェルトがにこやかにスメラギにチョコの包みを渡した。
「ありがとうフェルト。
……で、このチョコにはちゃんとお酒は入っているかしら??」
「い、一応入ってますけど…。」
「そう、なら良いのよ〜。
…あーあ、どうしてバレンタインデーってチョコを渡す日なのかしら。チョコよりお酒を渡す日の方が良いと思わない?」
「そんなこと思うのスメラギさんだけですよ…。」
フェルトが苦笑いを浮かべつつ言った。
「それにチョコも良いじゃないですか、アレルヤの美味しい手作りチョコがもらえますし。
お酒じゃ手作りは出来ませんよ?」
「いいえ、アレルヤならきっとお酒も手作り出来るに違いないわ!」
瞳をキラーンと輝かせながらスメラギは言った。
と、その時、スメラギとフェルトの所にチョコレートが入った小さな箱を沢山持ったアレルヤがやってきた。
「こんな所に居たんですね、2人とも」
「あら、噂をすれば影って所かしら?」
「アレルヤ、今年はどんなチョコを作ったの?」
「今年はチョコクッキーにしてみたんだ。ほら、」
アレルヤが箱の1つを開けて中身を2人に見せる。
「わぁ…!!ハロの形してる!」
フェルトが嬉しそうな声をあげる。
「すごいわねー、さすがアレルヤだわ。で、このチョコクッキーにはお酒、」
「入ってません。」
「……………そう……」
スメラギの期待に満ちた質問を一刀両断したアレルヤだった。
と、そこでフェルトがアレルヤに質問する。
「ねぇアレルヤ、どうして毎年トレミークルー全員にチョコをくれるの?作るのが大変でしょう?」
「……うーん、皆が僕の作る料理を美味しいって言って喜んでくれるから、かな。
もちろん、日頃の感謝の気持ちを示したいからっていう理由もあるけど」
少し照れながら言うアレルヤに、フェルトはにっこり微笑みながら言う。
「そっか。…うん、私もアレルヤの作るチョコ、毎年楽しみにしてるよ。感謝の気持ちだって、ちゃんと伝わってる」
「ありがとうフェルト。そう思ってくれてると、僕も嬉しいよ」
アレルヤは本当に嬉しそうに顔を綻ばせる。
「あら、私だってアレルヤのチョコは楽しみにしてるわよ〜
だから来年は手作りお酒ちょうだいね♪」
スメラギが茶化しているのか真面目なのか分からない風に言った。
「えぇ!?チョコじゃなくてお酒なんですか!?」
さすがにびっくりするアレルヤ。
「す、スメラギさん、いくらアレルヤでもお酒は作れませんってば!!」
「いや、まあ、作れるけどね……」
「「作れるの!!?」」
アレルヤの発言にフェルトが、そしてスメラギさえも驚きの声をあげたのだった。
「……何が『皆が喜んでくれるから』、だよ。
実際は媚び売ってるだけじゃねーの?」
アレルヤ達から少し離れた所にいたライルは不機嫌そうに言った。
側にいた刹那は不思議そうに問う。
「やけに辛辣なことを言うんだな。アレルヤと何かあったのか?」
「別に。」
「………。あったんだな」
「何でそうなるんだよ…」
イラついた様子で言うライル。
けれどすぐに怒りを収め、むしろ若干落ち込んだようになる。
「…アレルヤとは本当に何もねぇよ…、……俺が勝手に機嫌悪くしてるだけだ」
「……そうか。」
「そういや、刹那はもうアレルヤからもらったのか?」
「クッキーのことか?それならさっきもらった」
刹那がチョコの箱を手に持って示しながら言った。
「ライルはもらったのか?」
「…………まだもらってない。」
はぁー、と大きなため息をつくライル。
刹那はその様子を見て、『ヤキモチ焼きは大変だな』とのんびり思っていた。
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