BL

□優しくしたい。
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抱きしめた体の、見た目以上の細さに何だか焦る。


…まぁ今は、ティエリアの方がよっぽど焦ってるだろうけど。


だから、


最大限に優しい声で、ティエリアの耳元に囁きかける。


「…俺、近頃ティエリアにあんまり構ってやれてなかったよな。……ごめんな?」


「…………そんなことは…」


弱々しい声で言うティエリア。


緊張したように体が小さく震えている。


安心させたくて、抱きしめたまま片手でそっと頭を撫でた。


「ティエリア、最近俺のこと避けてただろ?
なぁ…、不安だった?俺がお前以外の奴に優しく接してるのを見て」


「……………べ、別に…僕は…っ…」


「意地張るなよ。…俺のせいでお前が嫌な思いしたのは事実だろ?」


「…違います、そうじゃ…なくて、」


「そうじゃなくて、……何?」


「…………僕が悪いんです……」


「…?」


俺はティエリアからそっと手を離す。


その拍子に毛布がずり落ちて、ティエリアの表情がよく見えるようになった。


なんだか悲しそうな顔をしている。


「…僕は、貴方が誰かに優しくすることが…………許せないんです」


「………。」


「でも、もしも貴方が誰にでも優しい人じゃなかったなら、僕はきっと貴方を………、好きになってなかった。
なのに、…僕にだけ優しくしてほしいって…思ってしまうんです……っ」


今にも泣きだしてしまいそうな様子で、ティエリアはそう言った。


見ていて痛々しくて、心がざわつく。


「こんな我儘な僕なんて、……嫌ですよね?」


ティエリアが上目遣いで俺を見る。


瞳にははっきりと涙が浮かんでいた。



「嫌な訳ないだろ」



即答する。


「…ぇ?」


驚いたように目を瞬くティエリア。


……ったく。


嫌がるどころかむしろ微笑ましいって。


…嫉妬するほど俺のことを好きでいてくれてるんだな、…って。思えるから。


俺はティエリアの目を真っ直ぐ見つめて、


静かな声で語りかける。



「…ティエリア。これから俺が言うこと、ちゃんと聞いてろよ」



「……?、…はい」


「…俺は。自分が世話焼きだって自覚はあるし、
周りに、誰にでも優しい奴って認識されても仕方ないかもしれないって思ってる」


「…………」


「でもな、お前に対しては…違うんだ」


「……………え…?」


「お前には…、優しさの他にも、もっと沢山のものをあげたい。……他の奴らにするみたいに優しくするだけじゃ、足りないんだよ。」


「――――……」



「いとしさだとか。ぬくもりだとか。……お前を大切にしたい気持ちだとか。
…俺の、ティエリアへの想いを全部……あげたいんだ」



ティエリアが驚いたように息を呑む。


俺を見つめる瞳が揺らぐ。


「…こんな風に思うのは、お前に対してだけだよ。
だから、いじけんな。寂しくなったらちゃんと俺に言え。…ずっとそばに居てやるから」



「…………っ…!」


ぽろ、と。


ティエリアの瞳から、涙の雫がこぼれた。


……泣き虫な奴。


ちょっとしたことでも心の奥深くまで受け止めて、…そうして、すぐに泣いてしまうんだろう。


本当は純粋な奴だから。


そんなティエリアがどうしようもなく、…いとしい。


素直に好きだと思えた。


俺は、もう一度ティエリアを抱きしめる。


さっきよりも、ずっと優しく。


「……ロックオン…っ、あの、…僕…っ…」


ティエリアが涙声で言う。


「…ん?」


「あの……その、
僕……、貴方が……。だいすきなんです。……すごく」


「………そっか。」


「だから…これからも、…どうか嫌いにならないで………」


きゅ、と。


ティエリアの手が俺にすがりつく。


「ならないよ。…嫉妬してる時のお前も、泣いてる時のお前も、ちゃんと全部好きだから」


「………ほ……本当に?」


まだ不安そうに言うティエリアに、思わず抱きしめる手に力がこもる。







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