BL

□優しくしたい。
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ライルの話によると、ティエリアはやきもちを焼いている…ということらしい。


…ティエリアがやきもち…ねぇ。


可愛い奴め。


ティエリアには悪いが、…正直少し嬉しかった。


が、喜んでばかりもいられない。


あいつは今頃、相当いじけているだろうからな。


機嫌を直してもらう為には、直接会わないと。


そういう訳で、ライルの部屋を出てティエリアの部屋に直行する。


「居るといいけどな」


留守だったとしても見つけるまで探すだけだが。



ティエリアの部屋の前に辿り着く。


扉に取りつけられた電子キーには、部屋の中に持ち主が居ることを示すランプがついていた。


さて。


どうやって開けてもらおうか。


ハロで開けちまってもいいんだが、それじゃちょっと強引すぎるもんな。


…別に強引なやり方が嫌いな訳じゃないが。


ただ、今のティエリアには逆効果だろう。


「……ティエリアー、」


名前を呼んでみた。


と、その瞬間。


部屋の中で、どさっ!!…と大きな音がした。


それに続いて、ぼとぼとと物が落ちるような音が連続して響く。


……大丈夫か、あいつ。


素で心配になってきた。


「ティエリア?おーい、生きてるかー?」


扉をノックしながら言ってみる。


数秒の後、小さな声が返ってきた。


「……………何の用ですか」


警戒心ばりばりな声色だった。


……。


「ティエリアと話がしたいな…と思って」


「………。何の話ですか…?」


「大事な話だよ。…開けてくれるか?」


「……………」


しばらくして、電子キーが解除されて扉が開いた。


意外に素直に開けてくれるんだな…と思いながら入ると、部屋の様子が視界に入ってきた。


テーブル上の小物が、まるで急いで並び直されたかのようにぐちゃぐちゃだ。


ベッド上のシーツも慌てて整えた感がある。


で、ティエリア本人はどうかというと。


何故か毛布にくるまり、ベッドの上に座っていた。


顔がちょっと赤い。おまけに眼鏡をしていない。


乱れた前髪からのぞく瞳が、恐る恐るといった感じにこちらを伺っていた。


怯えた小動物を連想させる。


…何だこいつ。可愛いぞ。


「……大事な話…というのは何でしょう…?」


ごにょごにょ声で言うティエリア。


ちょっと涙声だった。


……もしかしてさっきまで泣いてたとか?

涙をぬぐう為に眼鏡をはずして、毛布なんかかぶって表情隠してるのか…?


泣くほど、…寂しかったってことなのか。


…………。


「ん…。大事な話ってのは……さ。」


言いながら、俺はティエリアの隣に座る。


…何だか、いつもよりティエリアが小さく見える気がした。


不安そうにこっちを見つめている。


そんな様子に、いたたまれなくなり。


無意識にティエリアの肩を引き寄せた。


「…っ、」


驚いたように身を固くするティエリアの細い体を、


ぎゅっと抱きしめた。


「……………!」


ティエリアの動揺したように不規則な息遣いが、すぐそばで感じられた。


温かい吐息が首元をくすぐる。








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