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□2人きりのクリスマス
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刹那だった。


こちらに気づき、小走りで近づいて来る。


「…悪い。遅れた。」


息を弾ませながら、刹那は言った。


「……刹那ぁ…。よくも僕を25分も待たせたな…」


怨みがましく言ってやった。


でも、同時にほっとしてもいた。


…何だか悔しいけれど。


「一応、遅れてきた理由を聴いてやろう。言ってみろ」


「……。トレミーでのパーティーで酔っ払った2人組に絡まれて遅くなった。」


「…………。」


2人組………


スメラギとイアンか…。


「…なら仕方ないな」


これ以上怒るのは遠慮しておいてやろう。


…とは思いつつも、刹那を待っていて僕が寒い思いをしていたのは確かだ。


「………。」


刹那の首に巻かれている赤いマフラーが、とても暖かそうに見えた。


普段巻いている割と薄手のマフラーとは違い、厚くてふかふかそうだった。


刹那は気温の高い地方出身だから、案外寒さには弱いのかもしれない。


「……刹那」


「何だ?」


「そのマフラーを僕によこせ。」


「………突然ジャイアニズムを発揮されてもな……」


刹那が若干引きながら言った。


刹那め…万死。


「失礼なことを言うな。せめてスネ夫と言え」


「…いや、意味が分からないんだが。」


「とにかくマフラーをよこせ。僕は寒いんだ。凍りそうだ。僕が凍ったら君も困るだろう」


「……………」


渋々といった感じで刹那はマフラーをはずして、


僕の首にぐるぐる巻いた。


マフラーから微かに刹那の匂いがする。


元々の持ち主の体温で暖かくなっていたマフラーだが、それでも快適とは言えなかった。


「……何だこの適当な巻き方」


「他にどう巻けばいい?」


少し疲れ気味に言う刹那。


……マフラーの巻き方を1つしか知らないのか、君は。


「後ろで結ぶやり方にしてくれ。そうすればマフラーがうっとうしくてイライラせずに済む」


「マフラーでイライラするほど短気な人間も珍しいな…」


「何か言ったか?」


「言ってない。言ってない。(棒読み)」


「………………」




その後。


刹那にマフラーを巻き直してもらってから、僕達はとりあえず食事に向かうことにした。


「何か食べたいものはあるか?刹那」


「温かいものなら何でもいい。」


寒そうにしながら即答する刹那。


僕はマフラーの暖かさに満足しながら、刹那に返事をする。


「そんな不明瞭なリクエストには答えられないな」


「……じゃあハンバーガーでいい」


「クリスマスにハンバーガーは無いだろう…」


「じゃあホットドックでいい」


「そういう問題じゃない。」


「だが予算は1万円以内なんだろう。だったら食事は安いものにして、その後に色々金を使おう」


刹那がしれっと言った。


「………色々って何だ」


「…クリスマスっぽいことだ」


「………クリスマスっぽいことって何だ」


「…………………。」


「思いつかないなら言うな」


僕は呆れてため息を吐き出す。


「待てティエリア。俺にもクリスマスっぽいことの1つや2つくらい分かるぞ」


「…ほう。ならば言ってみろ」


「……。確か駅前にクリスマスツリーがあったはずだ。あれを見に行こう」


「見に行くだけなら無料だろう。なんにも金かけてないぞ」


「………。じゃあ……。展望台にでも登るか。ここから少し遠いが、バスに乗ればすぐだろう」


「……。…」


何か違和感を感じる。


「どうした?ティエリア」


「…刹那にしてはやけにクリスマスっぽい情報を持っているな、と思ってな」


「ああ、調べたからな」


こともなげに刹那は言った。


今年最大の衝撃が走った。


「……………ぇ………刹那………君が…、…下調べ??……えぇー……そんな馬鹿な」


「…そんなに驚かなくてもいいだろう」


いつも通りの無表情を、少しだけ不服そうにする刹那。


「いや、驚かなくてどうする!?」


思わずツッコミを入れる。


「…下調べくらいしておかないと駄目だろう。」


目をそらしつつ言う刹那。


「………そ、それは…そうかもしれないが」


けれど、


僕と刹那が2人で外出することに必要な行程なのか?それは。


それじゃまるで…、


……………。






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