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□雪が溶ける前に
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「…兄さん…?」


不自然に握り直したからか、ライルが訝しげに俺の方を見た。


結果的に目が合って、


そのまま見つめ合うような形になる。


――…間近で見るライルの瞳の綺麗さに一瞬、どくん、と胸が高鳴った。


双子なんだから目だって同じだろうと言われるかもしれないが、


それでもやっぱり俺から見れば、ライルは俺と全然違う。


透き通った瞳の色は俺なんかよりずっと澄んでいて、見ていて吸い込まれそうだった。


黙ったままの俺を、ライルは小首を傾げて不思議そうに見つめる。


そんな様子も俺にとってはたまらなく可愛くて。


……何より、愛おしく思えた。



ふと、白くて小さい何かが視界を横切る。


冷気の中をふわふわと漂うそれは、…粒のように細やかな雪だった。


突然の雪に俺とライルは思わず立ち止まる。


――ライルがそっと、雪の降る空を見上げた。


空を見つめる目が、静かに細められる。


その表情がとても優美で、


少し儚げに見えた。


………見ていて何故か訳も無く切なくなる。


ふいにライルの唇に雪が一粒、舞い落ちた。


―――その雪が溶けきる前に、


俺は抱きしめるようにライルに近づく。


…そして、優しく唇を重ねた。



重なった所から、ライルの暖かい体温が伝わってくる。


――あっという間に雪が溶け、水滴がお互いの唇を少しだけ濡らした。



直後、俺は体ごとライルから離れる。


ずっと繋いでいた手も…離れた。



突然こんなことをして驚いているだろうな…と思ってライルの方を見ると、


意外にもライルは落ち着いた表情で俺を見ていた。


ただし、その顔は真っ赤に染まっている。


……まぁ多分、俺も同じくらい赤くなってるんだろうけど…。



「……兄さん。」



ライルがふいに言葉を発する。


棘の無い静かな声だった。


それからライルは、ぶっきらぼうに手をこちらに差し出してきた。



「手。…ちゃんと繋いでろよ。
自分から繋ごうって言い出したくせに無責任だろーが」



「……っ」



予想外の言葉に驚いてライルの顔を見つめる。


赤く火照った顔はものすごく不機嫌そうで、

…それなのに瞳は人恋しそうに揺れていた。


………本当に素直じゃないな、こいつ。


でもそんな弟が…きっと俺は、すごく好きなんだろう。


そう思ったら、…自然と小さな笑みがこぼれた。



「……悪かったよ。今度こそ、ちゃんと繋いでる。
……絶対離さないから。」



俺はライルに微笑みかけながらそう言って、差し出された手をしっかりと握った。


―――優しくて暖かい、確かな温もりを感じた。







終わり。





次ページあとがき。



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