BL
□砂糖菓子のキス。
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1時間前。
僕はロックオンと冬の街中を歩いていた。
久しぶりの休日だったけれど、…だからこそ僕は、彼と一緒に居たくて。
駄目元で休日を一緒に過ごしてくれないかと言ってみたら、何故かあっさり承諾された。
そういう訳で、僕はロックオンと街を適当に歩きながら、他愛のない話をしていた。
……ただ一緒に居て話をするだけでも、とても心地がよかった。
安心するというか、何というか…。とにかく、嬉しかった。
ロックオンは相変わらず僕を優しく気遣ってくれて、寒いのが苦手な僕の為に、温かいコーヒーを買ってきてくれた。
………のだけれど。
受け取ったコーヒーの容器が思いのほか熱くて(ロックオン本人は手袋をしていたので気付かなかったらしい)、僕は自分の服の上に思い切りこぼしてしまった。
………それはもう、肌着に若干染み込むくらい盛大に。
ロックオンは慌てて謝りながら、とりあえず近くのホテルで服を取り替えようと言った。
……僕はロックオンの貴重な時間を奪う位なら、別に服がコーヒーまみれでも我慢出来たけれど。
万が一風邪でも引いたら、彼をますます困らせてしまうと思って。
だから2人一緒に、すぐ近くのホテルに入った訳で…。
………そして今ここで、こんな状況になっているのだけれど。
冷静になって改めて考えてみると…、………ぇ…、
ホテルで2人きりって………。……え…。
………………。
えー…っと…。
…………………………。
…………………。
…………激しくヴェーダに助けを求めたい気分……ッ
「…どうしたティエリア?黙り込んで」
ロックオンの声で、意識が現実に呼び戻された。
「…あ、い、いえ、何でも無いです。」
「…そうか?………まあいいや。
ていうか、ちゃんとシャワー浴びとけよ。風邪引くぞ?」
「そっ、そうですね、…はい、じゃあ、今から浴びます……」
必要以上にドギマギしてしまう。
……今の僕、絶対に顔が赤くなってる………。
「えーっと、…ロックオン、とりあえず浴室が出てくれませんか?」
「ん?…あぁ、悪い。
じゃあ、時間とか気にせずにゆっくり浴びろよ。お前の体、もう大分冷えちまってんだろ?」
「………まあ、…はい」
確かに、多少は寒い。
ここは彼の言葉に甘えた方が良いかもしれない。
「……………。ごめんな…?」
ふいに、ロックオンがつぶやいた。
………しまった。
さっきの返事、「はい」なんて言ったから……。
「あのっ、もう気にしなくても、」
と、僕が慌てて言ったその時、
ぽん、と。
ロックオンが突然、言葉をさえぎるように、僕の頭に手の平を優しく乗せた。
ちょっと困ったような感じで微笑みながら。
そのまま僕の頭を撫でる。
温かい感触が伝わってきて、思考が溶けてしまうような…、ふわふわした気持ちになる。
身体から緊張が解けていくような、…安心するような、そんな感じがする。
「…………」
………ずるい。
…何も言えなくなった…。
僕はロックオンを困らせたくなんてないのに……。
大体、服を汚したのは僕なのだし。
彼は、何も悪くない。責任なんて感じなくても良いはず。
なのに、どうしてこんなに優しいんだろう。
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