BL

□砂糖菓子のキス。
2ページ/9ページ


1時間前。



僕はロックオンと冬の街中を歩いていた。


久しぶりの休日だったけれど、…だからこそ僕は、彼と一緒に居たくて。


駄目元で休日を一緒に過ごしてくれないかと言ってみたら、何故かあっさり承諾された。


そういう訳で、僕はロックオンと街を適当に歩きながら、他愛のない話をしていた。


……ただ一緒に居て話をするだけでも、とても心地がよかった。


安心するというか、何というか…。とにかく、嬉しかった。


ロックオンは相変わらず僕を優しく気遣ってくれて、寒いのが苦手な僕の為に、温かいコーヒーを買ってきてくれた。


………のだけれど。


受け取ったコーヒーの容器が思いのほか熱くて(ロックオン本人は手袋をしていたので気付かなかったらしい)、僕は自分の服の上に思い切りこぼしてしまった。


………それはもう、肌着に若干染み込むくらい盛大に。


ロックオンは慌てて謝りながら、とりあえず近くのホテルで服を取り替えようと言った。


……僕はロックオンの貴重な時間を奪う位なら、別に服がコーヒーまみれでも我慢出来たけれど。


万が一風邪でも引いたら、彼をますます困らせてしまうと思って。


だから2人一緒に、すぐ近くのホテルに入った訳で…。



………そして今ここで、こんな状況になっているのだけれど。



冷静になって改めて考えてみると…、………ぇ…、


ホテルで2人きりって………。……え…。


………………。


えー…っと…。


…………………………。


…………………。


…………激しくヴェーダに助けを求めたい気分……ッ




「…どうしたティエリア?黙り込んで」


ロックオンの声で、意識が現実に呼び戻された。


「…あ、い、いえ、何でも無いです。」


「…そうか?………まあいいや。
ていうか、ちゃんとシャワー浴びとけよ。風邪引くぞ?」


「そっ、そうですね、…はい、じゃあ、今から浴びます……」


必要以上にドギマギしてしまう。


……今の僕、絶対に顔が赤くなってる………。


「えーっと、…ロックオン、とりあえず浴室が出てくれませんか?」


「ん?…あぁ、悪い。
じゃあ、時間とか気にせずにゆっくり浴びろよ。お前の体、もう大分冷えちまってんだろ?」


「………まあ、…はい」


確かに、多少は寒い。


ここは彼の言葉に甘えた方が良いかもしれない。



「……………。ごめんな…?」


ふいに、ロックオンがつぶやいた。


………しまった。


さっきの返事、「はい」なんて言ったから……。


「あのっ、もう気にしなくても、」


と、僕が慌てて言ったその時、


ぽん、と。


ロックオンが突然、言葉をさえぎるように、僕の頭に手の平を優しく乗せた。


ちょっと困ったような感じで微笑みながら。


そのまま僕の頭を撫でる。


温かい感触が伝わってきて、思考が溶けてしまうような…、ふわふわした気持ちになる。


身体から緊張が解けていくような、…安心するような、そんな感じがする。


「…………」


………ずるい。


…何も言えなくなった…。


僕はロックオンを困らせたくなんてないのに……。


大体、服を汚したのは僕なのだし。


彼は、何も悪くない。責任なんて感じなくても良いはず。


なのに、どうしてこんなに優しいんだろう。







.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ