BL
□君と何処までも。
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「ほらほらー、怒るなよライルー。良い男が台なしだぜー?」
「褒めんな!双子なんだから顔つき変わんねーだろ!」
「いやいや、だから変わるって。肌とか!腰周りとか!それに、」
「それ以上言うな!!弟に対して言うセリフじゃねーだろ!」
イライラが募りまくって声を荒げるライル。
見ていて面白かった。
「…ん〜、あと、性格もけっこう違うよな。
俺としては、お前みたいな性格に生まれた方が良かったんだが。
ま、性格なんざ生まれつきのモンだから仕方ないか」
「………っ、生まれつき、…か?」
ライルが急に、俺の発言に戸惑った表情を見せた。
そして、迷うような口調で言葉を発する。
「双子なんだから…、元の性格だって変わんねーだろ。
ただ、…俺が、勝手に皮肉屋みたいな性格になっちまっただけで。
……人望とか射撃のことだって結局、…兄さんより劣るのが嫌で、俺がやる気無くしたのが原因なんだろうし。」
「……、何言ってんだ。
双子だって別々の人間だろ。違うに決まってんじゃねーか」
「………っ?」
驚いて、うつむけていた顔を上げるライル。
………全く、こいつはそんなことも分かってなかったのか。
「大体、皮肉屋の何が悪いんだ。俺はお前の性格、けっこう好きだぞ?
なんつーか、こう、クールながらに核心を突く…みたいな感じが。良いじゃねーの、いじけんのだって愛嬌だし。」
「…は?…何を、言って…、」
「だから俺が言いたいのは、つまり…だな…、ええと。
とにかく、人間なんて1人1人違うのに比べ合うなんて馬鹿馬鹿しい、…ってことだよ」
「………………。」
俺の言葉に、黙り込むライル。
…それにしても。
今までライルの気持ちに、…苛立ちとか不安とか…そういうものに、気付いてやれなかったとは。
……俺は、兄として駄目な奴だよなぁ…。
だから。
さっきとは違って、優しくライルの頭を撫でてみた。
…ライルは黙ったまま、おとなしく撫でられてくれていた。
そのまま何分か経って、…やがてライルが小さな声でつぶやく。
「……なぁ、兄さん。………どこか、行かねぇ?」
「…?…どこか、って……、」
「だから、……適当に喫茶店とかでも良いし。
…何なら本屋でも良いよ。兄さんって、本好きだったろ?」
「………まあ、好きだけどな…。
え…、つーか良いのか?せっかくの休日なのに」
その言葉にライルは、再び不機嫌な顔になってしまった。
……な、何で。
「たまには兄弟水入らずで過ごそうっつったのは兄さんだろーが!
ほら、行くぞ本屋!それとも図書館にするか?俺はどこでも良いけどなっ」
そう言ってベンチから立ち上がり、俺の腕を引っ張るライル。
「え、……ら、ライル、」
さすがに戸惑う俺。
どんな心境の変化だよ?
「…何だよ。兄さん」
振り向いて、じーっと俺を真っすぐ見つめてくるライルに、俺は焦る。
何故か心臓がどきどきした。
「………い、いや、何でもない。
えーっと、じゃあ、そうだな、まずは図書館に行こうぜ」
慌てて話題を変える。
「………?」
ライルはまだ何か言いたそうだったが、そのまま黙って歩き出した。
置いていかれまいと、俺はライルの横に並んで歩く。
…そうやって青空の下を2人で並んで歩いている内に、
焦りが消えていき、何となく気恥ずかしいような、……嬉しいような、そんな気持ちになっていくのを感じた。
………とりあえず、ずっとライルの隣を歩いていたい、支えてやりたいと、そう思った。
終わり。
次ページ、あとがき。
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